戻り花火 14


(14)
「塔矢が何?」
嫌な予感に胸を高鳴らせながらヒカルは聞いた。
口を結んで風景を見渡す社の横顔が、急に大人びた自分の知らない顔に映る。
「あ――いや、この駅・・・塔矢がいつも、使おてる駅なんやなぁ思て・・・」
――なんだよ、それ。
ヒカルの視線に気づいたのか、社が慌ててフォローした。
「あ、つまりやな、塔矢ってあんまり普通の人間っぽくない言うか、電車に普通に乗ってる
とことか想像しづらいやん。せやから、アイツも普通にキップ買って手摺り掴まって、
乗り越してもーたら自動改札機でピコーンピコーン足止め食らうんかと思おたら、何やその・・・」
続く言葉を探して眉根を寄せ空を仰ぐ社に、ヒカルは助け舟を出した。
「・・・あー、確かに塔矢って、あんま親しくないうちはそんな感じあるかもな。
物食ってるとこも想像出来ないっていうか」
「せやろ」
社がホッとしたように笑顔になる。
その笑顔を見ていたら、急に今まで味わったことのない意地の悪い気持ちが込み上げてきた。
「――でも、塔矢と社ってもうそんな親しくないって間柄でもないだろ。
ずっと連絡取ってたんだろ?オレの知らない所でさ」
言い放つとヒカルは社の顔も見ずにさっさと階段を下り始めた。
棘のある言葉に社は一瞬呆気に取られていたようだったが、すぐに後を追ってくる気配がした。

――なんでオレ、こんなことしてんだろ。
大阪から数時間かけて自分たちに会いにやって来た社に対して申し訳ないと思った。
――違うんだ、社が塔矢を好きになったってそれは別にいいんだ。塔矢に憧れる奴なんか
他にいくらでもいるけど、それを怖いと思ったことはねェ。だからオレが怖いのは、
社が塔矢を好きになることじゃなくて――
改札口まで来て、一際目立つ凛とした姿にヒカルは足を止めた。
「進藤。あれ・・・一人?」
「塔矢――なんでここに」



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