Shangri-La第2章 14


(14)
緒方はゆっくりとビールを流し込んでいく。
喉を通りすぎる冷たさと泡の感触に生き返る心地がした。
最後の1滴まで飲み干してから、アキラの様子を見に
緒方は寝室へと立った。
音を立てないようにドアを開けると、アキラはもう眠っている様子だった。
ドアの隙間から差し込む明かりを頼りに周りを見回すと、
バスローブは脱ぎ捨ててあるが、用意しておいたパジャマや下着もそのままだ。
本当に裸で寝たのかと、半ば呆れながらアキラをもう一度見遣った。
横になって向こう向きに眠るアキラの上に掛けられた布団は
少しずれていて、背中が半ば剥き出しになっている。
このままでは風邪を引く、掛け直してやろうと緒方はベッドに近寄った。
細く光が差し込むだけの暗い室内で、アキラの背中は白く浮き上がり
緒方は吸い寄せられるままその背中に口づけていた。
外気に晒されていたその肌は、ひんやりと冷たくその美しさを裏付けたが
その冷たさに、何か不安をかき立てられるような気がして
手のひら全体で、今アキラが間違いなくここに存在するということを
確かめずにはいられなかった。触れた肌は滑らかで間違いなく、
それ故に、一度肌の上を滑らせた手はもう離すことが出来なかった。



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