裏階段 三谷編 14


(14)
彼がしている事は自分と同じだとすぐに分かった。進藤とその周辺の者に気付かれない
ようにして、進藤を見ている。
彼の視線を追うようにして、もう一度進藤を見る。
自分には触れる事が許されない存在。汚したくない存在。自分が棲む世界とは
違う世界に住む存在。他にはどんな言葉が当てはまるだろう。
肉体的な領海は何度か犯しながら気持ちの上では進藤を手に入れる事は叶わなかった。
そんな相手が他にも存在する。
進藤の前は、その相手を、何度か同じようにそうして見つめていた。
手に入らないと分かっていながらショーウインドウに張り付く子供のように、
透明なガラスの冷たさを手の平や頬に感じなければ自分の心を納得出来なかった。

「はあっ…あ、…あ…」
様子を見ながらゆっくりと腰を動かした。そういう行為を受けるように出来ている
器官ではない。そんな当たり前の事が分かっていない人種も中にはいるようだが。
言わなくても彼は自ら角度を微調整して来た。アキラもそういう所があった。
アキラは、自分が誰かの代用として抱かれている事を察していた。

進藤だけは、何度体を重ねてもそういう真似が出来なかった。大抵痛みの余りに
途中でひどく不機嫌になり、sexの後しばらくは口を聞いてくれなくなる。
それでも2〜3日もするとケロッと何もかも忘れたように明るく話し掛けて来るのだった。



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