金魚(仮)(痴漢電車 別バージョン) 14


(14)
 「じゃあ、外歩いても誰も気付かねえかな?」
「絶対大丈夫。女の子にしか見えねえモン。」
力強い和谷の言葉にヒカルは自信を持った。
「ちょっと、出てくる…」
と、ヒカルは玄関へと向かう。
「おー行ってこい!」
和谷も元気よく送り出した。


 伊角達が、頭にバニーの耳をつけたまま酔いつぶれて眠っている和谷と脱ぎ捨てられた
ヒカルの服を発見したのはそれからかなり後のことだった。

―――――――――――と、こんな長い長いいきさつを、ヒカルはかなり端折ってアキラに説明した。
 アキラに理解できたのは、研究会があったこと、宴会でお酒を飲んだこと、その勢いで女装を
したことだけだった。
………………だけど、やっと、わかったよ。
先程からの彼の怪しい言動の数々が…………。
「……要するにキミ…酔っているんだね?」
「酔ってねえモン…」
酔っぱらいの「酔ってない」ほど当てにならない物はない。それなのに、ヒカルはアキラに
顔を近づけて「酔ってない」と何度も主張した。
 間近に迫ったヒカルの顔はほんのり桜色に色付いて、目元はトロンと潤んでいる。柔らかそうな
髪からはシャンプーの香に混じって、微かにビールの匂いがした。



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