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失着点・龍界編 14
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ヒカルはあちこちにかすり傷を負っていたものの、背中の打撲位で入院も3日
程度だという。病院の中庭でベンチに3人で腰掛ける。
「びっくりしたよ、塔矢,すげえ恐い顔して立ってンだもん。誰か死んだの
かと思った。」
「…驚いたのはこっちだよ…。あの緒方さんがあんなふうだったから…」
ヒカルはちらりと緒方を見る。緒方は視線を逸らしてタバコを吹かしている。
ヒカルが一度だけ緒方と関係を持った事をアキラは知らない。
そのことは緒方と二人だけの一生の秘密だ。それは暗黙の了解となっている。
特に、アキラには。
それでも、緒方が自分の事を心配してくれた事がヒカルは嬉しかった。
突然行方をくらまして棋院の人たちに多大な迷惑と心配をかけた二人の処分を
決める場で、桑原と共に緒方が終始庇ってくれたと言う話を聞いている。
緒方にはいろんな意味で感謝している。
そして、こうして話を聞いて駆け付けてくれたアキラにも。
だからこそ、ゆうべの出来事が重くヒカルの胸を締め付ける。
アキラにはこれ以上心配をかけたくない。自分に何かあったら、こうして
アキラは何ごとに引き換えてでも自分との事を優先させてしまうだろう。
今回の件も自分だけの力で解決しなければいけない。
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