少年サイダー、夏カシム 14
(14)
何度その行為を続けたのだろうか。和谷はまるで記憶していなかった。ただ満足感と心地よい疲労感で、頭の中がからっぽの状態だった。
気がつくとヒカルは気を失っていて、ぐったりとした体からは大量の汗を流していた。
その姿を見てハッと我に返ると、病人になんてことをしたんだと、急いで汗を拭った。
ヒカルの白い体には、目をそらしたくなるほどあちこちに鬱血した跡や歯形などがあり、また尻のあたりには体液で汚れたシミがシーツに幾つもの跡を残していた。
それは先ほどの行為が夢ではないということを物語ると同時に、抵抗できない病人を自分の欲望のために傷つけてしまったという罪悪感と後悔の念で、和谷の頭をいっぱいにした。
どんなに罪を償っても許してはもらえないだろう。たとえ許してもらったとしても、自分がいつまた暴走するかわからないし、ヒカルはそんな自分を警戒し続けるだろう。
…もう昔のような関係には戻れない。和谷は自分の存在を消してしまいたい気分だった。
許しを乞うかのように、和谷はヒカルの体をやさしく丁寧に拭くと、新しい衣服を着せる。そして汚れたシーツを取り除いた。
ヒカルは何事もなかったのかのようにスヤスヤと眠っている。呼吸はだいぶ穏やかになってきた。
和谷は少し安心した。ふと床に置いてあるペットボトルが目に入った。
ヒカルが飲みたいと言っていた『少年サイダー』。人のせいにしてはいけないが、あの時ヒカルがこれを飲ませてなんて言わなければ、こんなことにはならなかったかもしれない。
今回のことで、ヒカルはこの飲み物を嫌ってしまうかもしれない。いや、夏が来るたびに、夏季限定の炭酸飲料を目にする度に、忌々しい記憶として思い出すかもしれない。
和谷は自分の罪を悔いて、涙を流すしかなかった。
「和谷・・・?」
泣き声で目を覚ましたらしい。和谷はゆっくりと顔をあげた。
罪悪感からまともに見ることができなかったヒカルの顔は、よく見ると幾筋もの涙のあとがあった。
目は赤く充血し、声が少しかすれている。
和谷は耐えきれず、深々と土下座した。
「ごめん。オレ、進藤にとんでもないことを。オレ、もうおまえの前から消えるから・・・、許してくれなくていいから…」
「もう…、いいんだ」
ヒカルは和谷の声を遮った。
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