魔境初?トーマスが報われている小説(タイトル無し) 14


(14)
冷えかけたシーツにもう一度寝転んで、俺たちは続きをはじめる。
和谷はゼリーを零れるほど手のひらにとって、丁寧に指に絡めた。
そしてもう一度、俺の後孔に手を伸ばす。さっき見当をつけたところを正確に探り当てて、和谷の人差し指が突き立てられた。
「いっ…た…痛い」
本当は、純粋な痛みはそれほどじゃなかった。だけど引き攣れた感覚が気持ち悪くて、怖くて。
「進藤。もうちょっと、力抜いて。ほら」
空いている手を伸ばして、和谷が俺の性器を愛撫する。
前も後ろも和谷の手に委ねられていることに、俺は羞恥と嬉しさが入り混じった奇妙な快感を得た。
強張っていたものが緩んで、俺のなかの指の動きも滑らかになる。そのタイミングを上手く捉えて、和谷が2本目の指を挿れた。

「くぅっ……」
1本目のときより、衝撃は少なかった。だけど苦しいことにかわりない。
指から逃れようとして無意識にずり上がりそうになる腰を、和谷がその場に縫いとめる。
「もう少し、もう少しだから。我慢してくれ」
宥めるような、和谷の優しい声。
それを聞いたからか、情けないことに涙が出てきた。
別に悲しくなんてないのに、壊れた蛇口みたいにぽろぽろ涙が湧いてくる。
「痛いのか? 耐えられない?」
違う、違う。必死に首を振る。痛いけど、辛いけど、耐えられないほどじゃない。これはそんなんじゃない。



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