社妄想(仮) 14
(14)
「…… …… ……」
声が出なかった。
自分の身に置き換えてなんて、ヒカルは考えてもみなかった事だった。
「な、んで…そんな、事……」
「へ? さぁ、知らへんよ、そんなん。ただ溜まってたんか……、よっぽどオレが好みやったんかもな」
ヒカルには、冗談めかしていう社が信じられなかった。
「何、何? オレの事にショック受けてくれてんの? ホンマ可愛いなぁ、自分。
心配せんでもえーで、オレ、今はそのオッサン達と仲良いし」
気持ち悪い。
自分は何故こんな問答をしているのだろう。
ヒカルは自分の知らなかった大人の欲望に嫌悪感を感じて震えた。
社は相変わらず、今ではオレが上になる事もあるし、と愉快そうに話している。
「まさに刺しつ刺されつの仲? って字もちゃうし、下品か。ハハハ」
「……お前、どっかおかしいよ。狂ってる」
恐怖を誤魔化しての精一杯の罵倒だった。
喉はからからに乾き、掠れた声はみっともなく震えていた。
だが、社の反応はヒカルが思っていたどんなものとも違った。
「それ、前に付き合っとった女にも言われたわ、性癖が歪んでる、とかなんとか」
よくゆーよな、自分だってオレの身体目当てで誘ってきたくせに。
そう言って社は笑う。あくまでも朗らかに。
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