魔境初?トーマスが報われている小説(タイトル無し) 14 - 15


(14)
冷えかけたシーツにもう一度寝転んで、俺たちは続きをはじめる。
和谷はゼリーを零れるほど手のひらにとって、丁寧に指に絡めた。
そしてもう一度、俺の後孔に手を伸ばす。さっき見当をつけたところを正確に探り当てて、和谷の人差し指が突き立てられた。
「いっ…た…痛い」
本当は、純粋な痛みはそれほどじゃなかった。だけど引き攣れた感覚が気持ち悪くて、怖くて。
「進藤。もうちょっと、力抜いて。ほら」
空いている手を伸ばして、和谷が俺の性器を愛撫する。
前も後ろも和谷の手に委ねられていることに、俺は羞恥と嬉しさが入り混じった奇妙な快感を得た。
強張っていたものが緩んで、俺のなかの指の動きも滑らかになる。そのタイミングを上手く捉えて、和谷が2本目の指を挿れた。

「くぅっ……」
1本目のときより、衝撃は少なかった。だけど苦しいことにかわりない。
指から逃れようとして無意識にずり上がりそうになる腰を、和谷がその場に縫いとめる。
「もう少し、もう少しだから。我慢してくれ」
宥めるような、和谷の優しい声。
それを聞いたからか、情けないことに涙が出てきた。
別に悲しくなんてないのに、壊れた蛇口みたいにぽろぽろ涙が湧いてくる。
「痛いのか? 耐えられない?」
違う、違う。必死に首を振る。痛いけど、辛いけど、耐えられないほどじゃない。これはそんなんじゃない。


(15)
声には出せなかったけど、俺の思いは和谷に伝わったらしかった。
「良かった。なら…いい?」
そう言って、和谷は俺の両足を持ち上げて、俺の身体をふたつに折り畳んだ。俺の目のすぐ脇に、ふくらはぎが見えた。
そして目線を落とすと、こんどはこっちを向いている俺自身のモノ。
「嫌、だ…なんか、潰れたカエルみたいで……」
とにかく、こんな体勢を和谷に晒しているのが耐えられない。たとえ、和谷がとらせたものでも。
和谷はちょっと目を瞠って、それからふっと笑った。
「そっか? 俺は扇情的だと思うけど。それにこれだけ足を持ち上げないと、挿れるのが難しいんだよ」
「でも嫌だ。後ろからとかでもいいじゃん」
「バックは初心者には辛いんだって。……そうか、これならいいだろ?」
言うなり和谷は俺の腕をぐいっと引っ張って、俺を起こした。
そして膝の上に座らせた。ただし向かい合った状態で。
もの凄く和谷の身体に密着した状態だ。しかもさっきから和谷のモノが、俺の太腿に当たってる。
これって、もしかして。

「騎乗位って、あんがい楽なんだと。 重力あるから挿れやすいって」
「挿れやすいって……」
「大丈夫、俺が挿れるから」
熱くて硬くて大きいものが、解された場所にあてがわれた。
やっぱり怖いけど。不安がないって言ったら嘘だけど。
だけど ―― 目の前に和谷の顔があるから。
覚悟を決めて、なるべく硬くならずに入ってくるのを待った。

「進藤、好きだよ。……愛してる」

「ひあぁぁぁぁ…っ! わ、やぁっ!!」
痛い熱い痛い。
「大丈夫、大丈夫だから」
苦しい痛い苦しい。
「ほら、最後まで入ったから。わかるか?」
涙はもう滝みたいに流れっぱなしで。もしかしたら鼻水とかも出てて、たぶん顔はみっともなくぐちゃぐちゃで。
「大好きだよ、進藤」



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