スノウ・ライト 10-12


(14)
じりりりりりり! ただいまより、第二部後編を上演いたします。


森の小人たちの仲は険悪となっていました。
しかしその原因であるヒカル姫は、そういうことに鈍かったので気にしていません。
このころになると、ヒカル姫と仲の良い者も決まってきました。
一番ヒカル姫が懐いているのはワヤでした。ワヤは研究会や碁会所などのデートスポット
にヒカル姫を誘ったりと、涙ぐましい努力をしたからです。
ヒカル姫もワヤのことはまんざらでもないようです。
他の小人たちは、ヒカル姫は高嶺の花、しょせん自分たちごときでは手が届かないと、
もうほとんどあきらめています。
それどころかリタイアする者までいました。イイジマです。
森の小屋に住んでいた七人の小人は、六人となってしまいました。
しかしそんななか、なんとか気を引こうと、ホンダは再度ヒカル姫に挑戦しました。
が、あっさり振られてしまいました。しかも捨てゼリフまでつけられました。
『オレにはもの足りねェぜ!』
ホンダは潔く負けを認めました。

このように、いろいろと問題はありましたが、とりあえずは平和な毎日を過ごしていた
ヒカル姫ですが――――


(15)
お城ではお后様がいつもの質問を鏡の精にしていました。
お后様は今度こそ自分がヒロインだと言ってもらえると思っていました。
しかし正直な鏡の精は偽ることなく言いました。
『それはヒカル姫です。ますます美しくなり、七人の小人の心を掻き乱すヒカル姫こそが
まさにこの物語のヒロインに相応しいでしょう。ハァハァ! ハァハァ!』
「何よそれ! 死んでいないばかりか美しくなっているですって? 冗談じゃないわ!
イスミは何をしてたの? あんたも鏡のクセにハァハァしてんじゃないわよ!」
お后様はイスミを呼びましたが、あいにくイスミは精神修養の旅に出ていました。
「人に頼むんじゃなかったわ。わたしが行くわ」
そう言うと、碁笥の中から碁石を一掴みとり、それを鍋で茹ではじめました。
ぐつぐつと煮える鍋のなかで、白と黒の碁石が浮いては沈んでいきます。
鍋を見つめるお后様の顔は、もはや魔女という言葉がお似合いでありました。


(16)
ある日、いつものように留守番をしていると、碁石を売る声が聞こえてきました。
ヒカル姫、三度の飯より碁石が大好きです。
嫉妬深い小人たちから、誰が来ても開けてはいけないと言われていましたが、ヒカル姫は
開けてしまいました。
「それ碁石? オレに見せてくれよ」
「お安いごようでございます。この碁石はとてもすばらしいもので、厚みがあり、貝で
できております。他の碁石とは一味違いますよ」
「へえ、一味違うんだ」
手渡された碁石をヒカル姫は口に含んでみました。
「うっ」
喉を押さえ、ヒカル姫はもがきました。碁石が詰まったのです。
しかし碁石売りは微動だにせず、苦しむヒカル姫を見ているだけです。
やがてヒカル姫は倒れてしまいました。
「ふふふ。わたしの言葉を真に受けて、毒で煮込んだ碁石を食べるなんて馬鹿ね。
 さあ、これでわたしがヒロインよ!!」
碁石売りの正体はお后様でした。お后様は笑いながら城へと戻っていきました。



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