初めての体験 141 - 144
(141)
「ひゃぁぁん!」
ジェルを塗った指先が、ゆっくりと進入してきた。最初は一本。探るように中で蠢いている。
「………ん!」
ヒカルはシーツに顔を押しつけて、その動きに耐えていた。
そんなヒカルの様子を見ていた男が、声を上げさせようとさらにもう一本指を増やした。
「あぁ!」
背後で男がニヤリと笑ったような気がした。
「痛い?大丈夫だよ。すぐに気持ちよくなるからね。」
三本目が入ってきた。ヒカルの秘門はいっぱいまで開かれている。
「んん!苦し……やめて………!」
ヒカルは呻いた。だが、「苦しい」と、口では訴えながらも、別の感覚が身体を支配し始めているのを
ヒカルは感じていた。
「ん………はぁ……」
男の指が、無遠慮に、ヒカルの中を我が物顔で蹂躙している。
『や……どうしよう…オレ…』
こんなヤツに感じている―――――――屈辱だった。
ヒカルはここ数ヶ月誰とも肌を重ねていなかった。
―――――――――北斗杯が終わるまで、塔矢の碁会所には行かない!
そう豪語した手前、アキラに会いに行くのは自分のプライドが許さなかった。碁を打つのと、
SEXは別だと言う考えもちらりと浮かんだが、それははちょっと無視がよすぎるのでは
と思った。かと言って、他の人のところへ行く気にもなれなかった。北斗杯が終わるまでは………
と、自分にわざと、枷を掛けていたのだ。
別に相手に不自由してネエんだから、我慢せずに適当にヌイておけばよかったんだ!
直接的なペニスへの刺激とは違って、後肛への愛撫は何ともいえずもどかしいような快感が
背筋を通り過ぎていく。
今のヒカルにとって、指での愛撫でさえ、刺激が強すぎた。ヒカルは快楽に身を委ね始めて
いた。
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「アァ………はぁン……」
男の指の動きにあわせて、腰が揺れる。
「ん……イイ……」
もう、この際誰でもいい――――――ヒカルはそう思った。
と、突然指が引き抜かれ、ヒカルは突き飛ばされた。
「うぁ!」
呆然と振り返ったヒカルの目に、顔を赤黒くして怒りに震える男の姿が目に入った。
『ナニ?なんで怒ってんの?』
さっぱり、ワケがわからなかった。
「よくも……よくも僕を騙したな!」
ひっくり返った声で男が叫んだ。騙した?いったい何の話だろう?
「純情だと思っていたのに………!処女じゃないじゃないか!」
・
・
・
………………………………………………………………………………………処女?
「なんにも知らないみたいな顔して………!よくも………」
言いがかりもいいところである。ヒカルは自分が初めてだなどと、一言も言っていない。
勝手に想像して、勝手に盛り上がって、勝手に幻滅したのは自分の責任だと思う。しかも
ヒカルの意志を無視して、こんなところへ連れ込んで、女の子の格好をさせて………それなのに
被害者は自分であるかのように振る舞う。理不尽もいいところだ。そう思ったが、ヒカルは
黙っていた。下手なことを口にして、男を余計に興奮させてはまずいからだ。
「帰れ!ここから出て行け!」
男が、ヒカルに服を投げつけた。しかし、このままでは着替えられない。ヒカルが両手を
男の前に差し出すと、男は憤懣やるかたないと言った表情でガムテープを引きちぎった。
ヒカルは素早く元の衣服を身につけると、そのまま黙って出て行った。
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ヒカルが漸く自宅に到着したのは、空が白み始めた頃だった。両親は当然、玄関でヒカルの
帰りを今か今かと待ちかまえていた。
「…………ただいま……」
小さな声で、帰宅を告げると同時に、雷が頭上に落ちてきた。
二時間にも及ぶお説教をヒカルは神妙に聞いていた。
途中何度か、「遅くなった理由を言いなさい!」と詰め寄られたが、ヒカルは口を噤んだままだった。
「言わないのなら、昨日言ったとおり、門限は八時にしますからね!」
母が最後通牒を突きつけた。それでもヒカルは黙っていた。
もしも本当の事を言ったら、門限八時どころか、ヒカルは金庫の中にしまわれて、一生
外に出してもらえないだろう。
『男に攫われて、犯されそうになったなんて絶対言えネエ…………』
ヒカルはひたすら、嵐が通り過ぎるのを待った。
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「あれ?」
ブックマークしていたアドレスに飛ぶと、そこには“Not Found”の文字が現れた。
アキラは溜息を吐いた。そこはアキラにとって第二のお気に入りのサイトだった。いつも
訪れるサイトに新しいリンクが張られていたので、好奇心からそこに飛んだのが、始まりだった。
なんと言っても名前がよかった。
「閉鎖したんだ…………すごくよかったのに……“ヒカルちゃんのお部屋”………」
そのサイトの管理人は、ヒカルのコアなファンらしく、隠し撮りしたヒカルの写真が
掲載されていた。本人もとられたことを気づいていないであろう写真を、アキラもいくつか
手に入れている。しかも、裏には、ヒカルの女装写真が……………。こちらは、アイコラである。
だが、自然な仕上がりで「ヒカルは本当は女の子」と、言われても誰も疑うものはいないだろうと
思うくらいの出来だった。
新作が上がるのを楽しみに待っていたのに…………。
「しょうがないか………」
まあ、ヒカルの女装写真なら、自分にも作れないことはないと思う。何せ自分はこだわりの
AB型。あのサイトに負けないくらいの職人技を極めてみせる。
「それに……………」
もしかしたら、ヒカルだって、頼めば女装くらいしてくれるかもしれない。
アキラは、ブックマークから、アドレスをはずした。
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