初めての体験 142
(142)
「アァ………はぁン……」
男の指の動きにあわせて、腰が揺れる。
「ん……イイ……」
もう、この際誰でもいい――――――ヒカルはそう思った。
と、突然指が引き抜かれ、ヒカルは突き飛ばされた。
「うぁ!」
呆然と振り返ったヒカルの目に、顔を赤黒くして怒りに震える男の姿が目に入った。
『ナニ?なんで怒ってんの?』
さっぱり、ワケがわからなかった。
「よくも……よくも僕を騙したな!」
ひっくり返った声で男が叫んだ。騙した?いったい何の話だろう?
「純情だと思っていたのに………!処女じゃないじゃないか!」
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………………………………………………………………………………………処女?
「なんにも知らないみたいな顔して………!よくも………」
言いがかりもいいところである。ヒカルは自分が初めてだなどと、一言も言っていない。
勝手に想像して、勝手に盛り上がって、勝手に幻滅したのは自分の責任だと思う。しかも
ヒカルの意志を無視して、こんなところへ連れ込んで、女の子の格好をさせて………それなのに
被害者は自分であるかのように振る舞う。理不尽もいいところだ。そう思ったが、ヒカルは
黙っていた。下手なことを口にして、男を余計に興奮させてはまずいからだ。
「帰れ!ここから出て行け!」
男が、ヒカルに服を投げつけた。しかし、このままでは着替えられない。ヒカルが両手を
男の前に差し出すと、男は憤懣やるかたないと言った表情でガムテープを引きちぎった。
ヒカルは素早く元の衣服を身につけると、そのまま黙って出て行った。
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