初めての体験 142 - 147
(142)
「アァ………はぁン……」
男の指の動きにあわせて、腰が揺れる。
「ん……イイ……」
もう、この際誰でもいい――――――ヒカルはそう思った。
と、突然指が引き抜かれ、ヒカルは突き飛ばされた。
「うぁ!」
呆然と振り返ったヒカルの目に、顔を赤黒くして怒りに震える男の姿が目に入った。
『ナニ?なんで怒ってんの?』
さっぱり、ワケがわからなかった。
「よくも……よくも僕を騙したな!」
ひっくり返った声で男が叫んだ。騙した?いったい何の話だろう?
「純情だと思っていたのに………!処女じゃないじゃないか!」
・
・
・
………………………………………………………………………………………処女?
「なんにも知らないみたいな顔して………!よくも………」
言いがかりもいいところである。ヒカルは自分が初めてだなどと、一言も言っていない。
勝手に想像して、勝手に盛り上がって、勝手に幻滅したのは自分の責任だと思う。しかも
ヒカルの意志を無視して、こんなところへ連れ込んで、女の子の格好をさせて………それなのに
被害者は自分であるかのように振る舞う。理不尽もいいところだ。そう思ったが、ヒカルは
黙っていた。下手なことを口にして、男を余計に興奮させてはまずいからだ。
「帰れ!ここから出て行け!」
男が、ヒカルに服を投げつけた。しかし、このままでは着替えられない。ヒカルが両手を
男の前に差し出すと、男は憤懣やるかたないと言った表情でガムテープを引きちぎった。
ヒカルは素早く元の衣服を身につけると、そのまま黙って出て行った。
(143)
ヒカルが漸く自宅に到着したのは、空が白み始めた頃だった。両親は当然、玄関でヒカルの
帰りを今か今かと待ちかまえていた。
「…………ただいま……」
小さな声で、帰宅を告げると同時に、雷が頭上に落ちてきた。
二時間にも及ぶお説教をヒカルは神妙に聞いていた。
途中何度か、「遅くなった理由を言いなさい!」と詰め寄られたが、ヒカルは口を噤んだままだった。
「言わないのなら、昨日言ったとおり、門限は八時にしますからね!」
母が最後通牒を突きつけた。それでもヒカルは黙っていた。
もしも本当の事を言ったら、門限八時どころか、ヒカルは金庫の中にしまわれて、一生
外に出してもらえないだろう。
『男に攫われて、犯されそうになったなんて絶対言えネエ…………』
ヒカルはひたすら、嵐が通り過ぎるのを待った。
(144)
「あれ?」
ブックマークしていたアドレスに飛ぶと、そこには“Not Found”の文字が現れた。
アキラは溜息を吐いた。そこはアキラにとって第二のお気に入りのサイトだった。いつも
訪れるサイトに新しいリンクが張られていたので、好奇心からそこに飛んだのが、始まりだった。
なんと言っても名前がよかった。
「閉鎖したんだ…………すごくよかったのに……“ヒカルちゃんのお部屋”………」
そのサイトの管理人は、ヒカルのコアなファンらしく、隠し撮りしたヒカルの写真が
掲載されていた。本人もとられたことを気づいていないであろう写真を、アキラもいくつか
手に入れている。しかも、裏には、ヒカルの女装写真が……………。こちらは、アイコラである。
だが、自然な仕上がりで「ヒカルは本当は女の子」と、言われても誰も疑うものはいないだろうと
思うくらいの出来だった。
新作が上がるのを楽しみに待っていたのに…………。
「しょうがないか………」
まあ、ヒカルの女装写真なら、自分にも作れないことはないと思う。何せ自分はこだわりの
AB型。あのサイトに負けないくらいの職人技を極めてみせる。
「それに……………」
もしかしたら、ヒカルだって、頼めば女装くらいしてくれるかもしれない。
アキラは、ブックマークから、アドレスをはずした。
(145)
「ヒカルちゃんはダメだ………」
男は、ブツブツと呟きながらキーを叩いた。部屋の中は、男の独り言とパソコンのキーを
叩く音しか聞こえない。
「やっぱり、あの子の方がよかった………」
そう、プライドが高くて高飛車だけど、本当は寂しがり屋のお嬢様。
最後にタイトルのタグを打ち付ける。男がブラウザを立ち上げ、新しいホームページの
出来映えを確認した。
画面いっぱいに、タイトルが映し出された。
アキラ様のお部屋――――――男の新しい城の名前である。
おわり
++++++ おまけ分岐 ++++++
ヒカルちゃんは処女ではなかった。
どうしますか?
A:詐欺だ!暴れる >142へ
→ B:全然オケーノープロブレムがんがん行くよ >146へ
(146)
「アァ………はぁン……」
男の指の動きにあわせて、腰が揺れる。
「ん……イイ……」
もう、この際誰でもいい――――――ヒカルはそう思った。
「ん!んんん………あぁん……」
ヒカルは喘いだ。早く、早く欲しい。
男の指がリズミカルにヒカルの内部を擦り上げる。
「ひゃあん!」
華奢な太腿の間で揺れているヒカル自身は、今にも弾けそうになっていた。スカートには
不釣り合いなそれを、男が空いている方の手でソロリと撫で上げた。
「や!出ちゃう………アァ…!」
ヒカルはシーツを握り締めた。
熱いものが男の手を伝って、ヒカルの腿を汚していく。
「ハ…ふぅ…」
顔を押しつけていた部分が、微かに濡れている。きつく閉じられた瞼をゆっくりと持ち上げると、
睫に溜まっていた涙がシーツに新しい染みを作った。
(147)
快感と屈辱と自分に対する嫌悪感に震えるヒカルの背中に、男が覆い被さってきた。
「ヒカルちゃん、初めてじゃないんだ?」
耳元でそう囁かれて、ヒカルは頬を朱に染めた。
「初そうに見えたのに………意外だなぁ………」
男はジェルで濡れた指先で、ヒカルの胸をまさぐってきた。
「はぁ…ヤダ……」
ヒカルは小さく首を振って、男の腕から逃れようと藻掻いた。
「可愛い……こんなに可愛いのに…もう、経験済みだったんだね?」
腕の中の小さな抵抗を男は愛おしそうに、抱きしめる。
「そうだよね。こんなに可愛いんだから、他のヤツが放っておくわけないよね?」
両手でヒカルの胸を揉みながら、耳たぶを噛んでくる。
「ここ、舐められたことある?」
胸の突起を押しつぶされる。
ヒカルは喘いだ。静まったはずの身体が再び熱くなり始めている。
「あるに決まっているよね……じゃあ、ここはどう?」
男は、片手を下腹部へと移動させ、ペニスを握り込んだ。
「ひぃ!いやぁ!」
男が軽く手を上下させると、それは徐々に形を変え始めた。
「もう、二回もイッてるのに………ヒカルちゃんて結構インランなんだね?」
その言葉にヒカルは本気で泣きたくなった。それを否定するつもりはないが、こんな変質者に
言われたくはなかった。
「ン………んふぅ……」
それでも、唇からは快感を示す嬌声が吐き出されるだけだった。それが、また、焼かれるような
羞恥でヒカルの身体を覆おうとするのであった。
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