平安幻想異聞録-異聞- 145 - 148
(145)
「あぁ、あぁ、あぁ、あ…」
もう十分とみたのか、男がいきりたったものを突き入れてきた。
「あぁぁぁぁ!」
だが、その男の陽根は普通と比べてもわずかに小さく、全身で快楽を求めている
今のヒカルが満足できるようなものではなかった。そのため、なんとか充足感を
得ようとするヒカルの内壁の方が、ギュウギュウと積極的に男のものを締めつける。
「ほぅ、ほぅ、これは座間様の言う通り、またとない名器よ」
男が奇声を上げた。
「や、あ、あ、あ、あぁぁっ」
ヒカルの悲鳴に合わせて男は腰をわずかに振ると、あっと言う間に果てた。
「さっさとどいて、儂と変わらぬか」
もうひとりの公達が、今度はそのごく標準的な大きさのモノを、ヒカルのそこに
押し込める。
「あぁぁあぁーーっ」
ヒカルの背筋が反り返った。
「これこれ、あまり暴れるでないぞ」
他の二人がヒカルの体を押さえるうちに、ヒカルの中のその男が動き出す。
「はんっ、やっ、やっ、やっ、あぁぁ、あぁぁっ」
今度はそう簡単ではなかった。この少年の体を目一杯に楽しもうと、二人目の公達は
様々な角度から内壁を責めてくる。
「いやぁぁ、いやぁ、あんっ、あ……」
「ここか?ここか?ここがよろしいのか?」
「あぁあ、あぁ、やん、や、あん!」
ヒカルが大きく頭を左右に振った。
「そうか、そうか、ここがよいのか」
一点を集中的に責めてきた公達に、ヒカルの体は跳ねてそりかえった。
「あぁぁぁん、やだ、やだ、だめぇぇっ!」
「おぉおぉ、なんとも元気の良い、若アユのようだのう」
(146)
「ほんに、ありきたりの稚児などでは望めぬさまよ」
公卿たちの的外れな褒め言葉など、ヒカルの耳には届かない。ただ、ヒカルは中を
擦られる快楽に鳴きつづける。
「はんっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、…」
瞬間、ヒカルはその男の腹に向けて、自分の白泥液をも放っていた。
正直、二人目の男が終わった時点で、ヒカルに施された薬の効果はほとんど
切れていたが、一度火がついてしまった体は、感覚だけが暴走してしまったように
熱が収まらず、三人目の男の摩羅もなんなく銜え込んでしまう。
「はぁぁ……ぁ」
三人目の男がゆっくりと腰を揺らし始める。
「あまり食い急ぐのは、無粋というものであろう、お二方、こういったものはもっと
ゆうるりと楽しまねば、座間殿に、それほどの床日照りかと笑われますぞ」
立て続けの絶頂の余韻にざわめいているヒカルの内壁を男はネチネチと刺激する。
「ハァ…あ…はぁ……はぁ…はぁ…」
男の下でヒカルが、体に再びこもりはじめた熱に苦しげに喘ぐ。その幼い中心のものが
体を支配する感覚に流されて、頭をもたげ始めていた。
(147)
平安の夜の闇は深い。
魍魎跋扈、百鬼夜行の通る碁盤の目に張り巡らされた往路。
だが、その妖し、物の怪がどこから出現するのかを知っているものは、名のあ
る陰陽師の中にもいないという。
人によっては、あだし野から、いや鳥辺野からとも聞く。
だけど、とヒカルは思う。妖しが生まれるのだとしたら、それはきっと人の
心の中の闇からだ。
その闇は、月のない日の夜の色より濃く、山中にひっそりと口をあける
洞窟よりも深く底が知れない。
そんな得体のしれない不気味さを、自分を組み敷く男達の目はたたえていた。
権力欲とか、情欲とかそういうものが渦巻いて、黒々しいよどみになって、その
瞳の向こうに見える気がした。
この三人の男達だけではない、座間も菅原もその目、心の奥に同じよどみを
抱えている。
そして、その闇はきっと、人が誰でも持っているものなのだ。
そう、ヒカル自身や、佐為だって。
その考えはヒカルがきちんと思考して生まれたわけではない。
唐渡りの香のせいで分断された思考のまにまに、まるで、泡のようにぷかりと
浮かんできたのだ。
一通り事が終わり、順番が一巡すると、公卿達にも余裕が出てきたのか、
彼らはようやく、中途半端に脱がされかけた単衣を、ヒカルの体からはぎ取ろうと
した。
御簾の隙間から、秋の夜風が迷いこんでいた。
庭でコロコロと鈴を転がすように鳴く虫の調べが、男達の欲に汚れた息遣いに
混じって、ヒカルの耳に届く。
(148)
うつぶせに大きく胸を喘がせているヒカルは、単衣の前身ごろをきつく握って
それに抗う。なおも強引に、胸元のヒカルの手を引きはがそうとした公卿は、
他の公卿に止められた。
「無理矢理というのも風情のないことよ。このままでも十分に物狂おしい様子
ではないか」
ヒカルは着衣の襟の合わせのあたりを押さえ、半身をかばうように体を丸め
ていたが、その着物の裾は、最初の立て続けの乱暴な情交のせいで、乱れ、
はだけられていた。
「河原の遊女もかくやという様よ」
太もものかなり上の方までずり上がり、グシャリとシワがよって、ヒカルの足を
夜目にさらす単衣の裾は錆びた鉄を思わせるひなびた辰砂の赤い色。
その裾からすんなりと延びる無駄な肉のついていない、白蛇のようになめらかな足。
しかも、その肝心の足の根元の方は、微妙に布に隠れていて見えそうで見えず、
そのほの暗い奥にあるだろう果実の味は、公卿達の淫靡な想像力を、なまじっか
全てを目の前にはだけられた時よりも燃え立たせたのだ。
情欲に駆られて男達は生つばをのんだ。
船遊びで、男を誘う遊女さながら。
「緋色の袴を着せれば、さそや似合うであろうよ」
赤い袴は遊び女の印だ。
一番年長の男が、誘われるように思わずといった手つきでヒカルの足に触れた。
ヒカルは丸めていた体をますます小さく縮めた。
「なんじゃ、拗ねておるのか。わしらの方が先にいい思いをしてしまったからのう。
すまんことをした」
男の手が、ヒカルの膝のあたりから、太ももを這い登り、ついに、辰砂の単衣の影に
隠された部分に忍び入った。
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