平安幻想異聞録-異聞- 147


(147)
平安の夜の闇は深い。
魍魎跋扈、百鬼夜行の通る碁盤の目に張り巡らされた往路。
だが、その妖し、物の怪がどこから出現するのかを知っているものは、名のあ
る陰陽師の中にもいないという。
人によっては、あだし野から、いや鳥辺野からとも聞く。
だけど、とヒカルは思う。妖しが生まれるのだとしたら、それはきっと人の
心の中の闇からだ。
その闇は、月のない日の夜の色より濃く、山中にひっそりと口をあける
洞窟よりも深く底が知れない。
そんな得体のしれない不気味さを、自分を組み敷く男達の目はたたえていた。
権力欲とか、情欲とかそういうものが渦巻いて、黒々しいよどみになって、その
瞳の向こうに見える気がした。
この三人の男達だけではない、座間も菅原もその目、心の奥に同じよどみを
抱えている。
そして、その闇はきっと、人が誰でも持っているものなのだ。
そう、ヒカル自身や、佐為だって。

その考えはヒカルがきちんと思考して生まれたわけではない。
唐渡りの香のせいで分断された思考のまにまに、まるで、泡のようにぷかりと
浮かんできたのだ。
一通り事が終わり、順番が一巡すると、公卿達にも余裕が出てきたのか、
彼らはようやく、中途半端に脱がされかけた単衣を、ヒカルの体からはぎ取ろうと
した。
御簾の隙間から、秋の夜風が迷いこんでいた。
庭でコロコロと鈴を転がすように鳴く虫の調べが、男達の欲に汚れた息遣いに
混じって、ヒカルの耳に届く。



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