初めての体験 148 - 156


(148)
 男は、必死で離れようとするヒカルの身体を、強く抱き寄せた。そして、股間を嬲る手を
さらに奥へと忍ばせる。
「やぁ!もう、やだ!」
 男がヒカルを引き寄せたことで、背中も腰も隙間無く密着している。男の熱さをヒカルは
改めて感じた。
―――――お尻にあたってるよぉ…………
剥き出しの尻の谷間に挟むように、男は昂ぶりを押しつけてくる。ズボン越しでも、その
大きさを容易に想像できた。
 これから起きるであろうことを考えてヒカルは震えた。男に対する恐怖と嫌悪。だけど、
それだけじゃない。何かもっと別の―――そう、もっと甘くて切ないもの………
―――――オレ………期待してる?
ヒカルは激しく首を振った。そんなはずはない。こんな怖い目に合わされているのに……。
自分の女装写真で埋め尽くされた部屋の中で、同じように女装させられて、いいように扱われて
いるというのに………。
 「もう、イヤ!やだ、離して………離せよぉ!」
頭の中に浮かんだ考えを振り払おうと、ヒカルは滅茶苦茶に暴れ始めた。
「どうしたの?大丈夫だよ。乱暴はしないからね………」
男はヒカルの項に唇を押しつけ、あやすように揺すった。
「ヒカルちゃんって、甘くていい匂いがする………身体もちっちゃくって、柔らかくて
 砂糖菓子みたいに簡単に崩れそう…………」
ヒカルの髪の匂いを吸い込み、うっとりと呟いた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 そんなわけないだろう―――――――!?
ヒカルは今の自分の姿を改めて、思い返した。顔は涙と涎で汚れ、身体は汗でビショビショに
濡れている。下半身に至ってはもう…………………それで、いい匂いって…………変態!

 ヒカルは心の中で、知っているすべての言葉を使って男を罵った。そんなことをしても
気持ちが晴れるわけではなかった。身体の方も静まるどころか昂ぶる一方だ。
 こうしている間にも、男は舌や指を使ってヒカルを嬲り続ける。そうやって、ヒカルの
熱を煽り続けているのだ。
 ヒカルはもう限界だった。身体の要求に心がついていかず、混乱するばかりだ。もう、
一秒だってここにいたくない。こんなヤツにヤラれるのはイヤだ!ここを出ることさえ
出来れば、この快感は簡単に引いていくはずだ。ヒカルはそう信じた。信じたかった。
―――――期待なんかしてない………!絶対!
「もう…ヤダよ…帰してよ…家に帰りたい…」
ヒカルは男に泣きながら訴えた。


(149)
 男の腕に力が入る。ヒカルは怯えた。男がさっきいったみたいに、潰すつもりだろうか?
無言で、ヒカルを片手で胸に抱え込んでくる。強い力で抱きしめられてヒカルは呻いた。
「大丈夫。ちゃんと帰してあげるよ。」
男はそう言って空いた手を下へと移動させた。
 ヒカルの腰の辺りでなにやら蠢いていたが、やがてジー………っとファスナーをおろす音が
ヒカルの耳に届いた。
「あ!」
逃れようと、身体を突っぱねたが、簡単に押さえ込まれてしまう。後ろにあたっているものの
熱さを直に感じる。それは少しの間位置を探るように、ヒカルの谷間を彷徨っていた。
 男は、ヒカルの身体をしっかりと胸に固定した。
「約束するよ。ただ、ちょっとヒカルちゃんとイイ気持ちになりたいんだ………」
その言葉と同時に堅いものがヒカルの中に押し入ってきた。
「ハァ!イヤ、イヤ、やだぁ――――――――!」
 男の進入を拒もうと、身体を強張らせたが、胸の突起をほんの少し弄られただけで簡単に
力が抜けてしまった。
「ァ…やぁ……!」
その隙を逃さず、男は一気に奥へ進んだ。
「!!あ、あ、ああああぁ、あ――――――――」
「全部入ったよ………感じる?ヒカルちゃんの中、すごく熱くて柔らかい………」
男の荒い息が首筋に掛かる。
 ヒカルはシーツを握り締めた。その手の甲に、ポタポタと熱いものが零れ落ちた。


(150)
 ヒカルは確かに初めてではない。この年の少年にしては、経験は多すぎるくらいだと思う。
だが、好きでもない相手に平気で身を任せることが出来るほど、ヒカルはスレてはいなかった。
たかが、セックスと単純に割り切ることなど出来ない。
 それなのに、男に嬲られて簡単に陥落してしまった自分の身体に腹が立った。すっかり内部に
収まってしまった男の熱がヒカルを煽る。その大きさに、ヒカルの心臓は今にも止まって
しまいそうだ。
 「うぅ………うん………」
男が小さく抜き差しを始めると、ヒカルは切れ切れに小さく息を吐いた。
「ヒカルちゃん、感じやすいんだね…ココすごく柔らかくて…こっちもトロトロ…」
ヒカルの前に手を添えて、自分の動きに合わせて擦り上げる。
「あ、あぁん…!ふ…」
「ねえ…ココで何回くらいした?」
突き上げながら、とんでもないことを訊ねてくる。ヒカルは、小さく喘ぎながら首を振った。
そんなこと聞かれる筋合いはないし、答えたくもない。
 男はそれをどう受け取ったのか
「そっか〜数え切れない位したんだ………」
と、感心したように言った。ヒカルはその言葉にカッと身体が熱くなった。
 男が喉の奥で微かに笑った。
―――――わざとだ…………
ヒカルが答えられないことを知っていて、恥ずかしい質問を訊いているのだ。
 男にいいように扱われている自分が情けなかった。そして、そうされることで、身体の
奥に疼くようなもどかしい感覚が湧き起こるのを認めることがイヤだった。


(151)
 「うぁあ、イヤぁ……」
じらすような動きに、ヒカルは喘いだ。男は、故意にヒカルが感じるポイントをずらして、
腰をすりつけてくる。
「ヒカルちゃん、僕は何人目?」
「ヒカルちゃんは可愛いから、相手に困らないよね…棋士仲間とかとした?」
 一瞬、ビクリと肩を震わせたが、すぐに首を振って否定した。こんなことをしても、きっと
ウソだとバレてしまうだろう。
 男はクックッと篭もった耳障りな笑い声を立てた。
「ウソつきだなぁ。」
ヒカルを圧迫していたものをいきなり引き抜かれ、息が詰まった。
「は……あぁん!」
「このままじゃあ、ヒカルちゃんの顔が見えないからね………」
 男は、ヒカルの腰を持ち上げて、そのまま仰向けに返した。ヒカルの腰は、男の両手で簡単に
一回りできるくらいの細さだった。男が感嘆の声を上げた。
「本当に華奢なんだね………こんなに小さくて…か細くって………」
 そのまま男は動こうとしなかった。ヒカルはずっと閉じていた瞳を恐る恐る開いた。
男は、ヒカルを見つめたまま動かない。その表情は恍惚として、うっとりとヒカルに見とれて
いた。
 その魂を抜かれたような瞳に恐怖を覚えた。ヒカルは、男から身を隠そうと、小さな身体を
ますます小さく折り曲げた。


(152)
 男は、身体を小さく丸めてねっとりと纏い付くような視線から隠れようとする―実際は
そんなこと不可能だったが―ヒカルの足首を軽く持ち上げ大きく左右に開いた。
「や、やめて………!」
ヒカルは、首を振って激しく抵抗したが難なく押さえ込まれた。
「だって、こうしないとヒカルちゃんの可愛いココが見えないじゃないか……」
舐り上げるような声がその場所にからみつく。
 男に視姦されている羞恥と緊張からか、ヒカルのそこはヒクヒクと収縮を繰り返した。
「ヒカルちゃん、欲しいんだね?」
ニヤニヤと嫌らしい笑いを口元に張り付かせたまま、ヒカルの鼻先まで顔を寄せる。 ヒカルは
激しく首を振った。
「照れなくてもいいんだよ…今、あげるからね…」
言い様ソコに突き入れられた。
「アァ―――――――――――――――――ッ!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 息が詰まりそうな衝撃にヒカルは身体を仰け反らせる。頬を上気させ、小さく息を吐く
ヒカルを満足そうに眺めると、男は、そのまま激しく突き上げ始めた。
「あ、アァ、いやぁ!や、やぁだ………!ア、アン……!」
先程とは打って変わった激しい動きに、ヒカルは喘いだ。
「ア、ア、ア、ア、ヤダ…………」
「ヒカルちゃん……ヒカルちゃん…気持ちイイ?」
「イヤ!イヤだ………」
ヒカルは縛られたままの両手を突っぱねて、自分の顔の間近に迫った男の顔を押し返した。
その途端、深く抉られて、ヒカルはか細い声で悲鳴を上げた。
「あ――……」
ヒカルは、ポロポロと大粒の涙を流して、男の与える屈辱的な快感に堪えようとした。
 絶対、降参なんかしない――――――そう思ったとき、男がヒカルの腰を強く押さえつけた。
「ヒ、ヒカルちゃん………僕もう…」
ヒカルを穿つその動きが早くなる。腰を打ち付ける高い音に合わせるように、男の呼吸も
荒くなっていく。
「ハァ、ハァ、ハァ…………ヒカルちゃん、ヒカルちゃん………」
 譫言のようにヒカルを呼び続けていた男の息が、瞬間止まった。
「ウゥ―――――――」
「いやぁ―――――――――――!」
 男がヒカルの中を汚したのと同時に、ヒカルもミニスカートに飛沫を散らした。


(153)
 「う………うぇ………ふぅ……」
ヒカルは堪えきれず、しくしくと泣き出してしまった。男はヒカルの細い身体を抱きしめ、
息を整えている。首筋にあたる生暖かいそれが、気持ち悪い。
「もう…いやだ………離して……」
ヒカルはまだ、男に貫かれたままだった。
 男は無言だった。
「帰してくれるって言ったじゃん………もう、帰してよ…」
泣きながら訴えるヒカルを無視して、男は再びゆるゆると腰を動かし始めた。
「ア……!いや、いや、ヤメロ!バカ……!」
「ヒカルちゃん…もうちょっと…もうちょっとだけ……ヒカルちゃんもまだ足りないだろ?」
男はそう言って、ヒカルの一番弱いところを埋め込まれた心棒で軽くつついた。
「あ……」
ヒカルは反射的に身体を強張らせた。それが、内部にいる男を強く締め付ける。
「アァ…いいよ…ヒカルちゃん……」
男はうっとりとヒカルを見つめ、軽く腰を揺すった。
 ヒカルは顔を背けた。男の行為は、ヒカルの意志と無関係にその身体を昂ぶらせて行く。
「あ…ふぅ……やめろ……ヤメロったら……!」
仰け反らせた白い喉に、男がむしゃぶりついた。
「ン……いや…」
大きな掌が忙しなく胸元を這い回る。
「イイ……すごくイイよ…ヒカルちゃんのココ…」
ヒカルの気持ちなどお構いなしに、ガンガンと腰を打ち付けられる。ヒカルは泣き叫んだ。
全身を強張らせ、男を拒否しようとするが、それは却って相手に深い快感を与えただけだった。
 「やだぁ…たすけて…たすけてぇ…――ゃ…!」
助けなど来ないことはわかっていたが、ヒカルは必死に叫んだ。助けを求めずにはいられなかったのだ。
 そのとき、ほんの一瞬だけ男が動きを止めた。だが、ヒカルが息を吐く間もなく、
再び深く抉られた。
「――――――――――――!」
ヒカルの身体は硬直し、そのままゆっくりと弛緩していった。


(154)
 男が楔を引き抜くと、それとともに溢れ出た精液がヒカルの白い内股を濡らした。
「サイコーだったよ…すごくよかった…」
満足げな男の顔をヒカルはぼんやりと見つめた。男はヒカルの両手の戒めを解きながら、
話しかけてくる。
「でも、知らなかったよ………」
「…………」
『何が?』とは聞き返さなかった。そもそも、この男はあまりに一方的すぎて、最初から、
会話が成立していない。
 男は返事をしないヒカルに気を悪くした様子も見せず、先を続ける。
「ヒカルちゃんが、アキラちゃんと付き合っていたなんて………」
「!」
ヒカルはゆっくりと男と視線を合わせた。男はニヤリと笑った。
「大丈夫。誰にも言わないよ……ヒカルちゃんがレズだなんて……」
男の脳内ではどうやらアキラも女の子らしい。それにしても、どうしてここでアキラの名前が
出てくるのだろうか?と、暫く考えて「あっ!」と思い当たったとき、顔から血の気が
引いた。さっき、助けを求めたとき、無意識にアキラを呼んだような気がする。
 青くなって震えるヒカルに男が笑いかけた。
「本当に誰にも言わないよ…二人とも美少女で、すごく似合っている………」
そう言いながら、男は再びヒカルに覆い被さってきた。ヒカルはただ、ショックで呆然と
していて、男にされるがままになっていた。


(155)
 男は脱力しているヒカルの身体をあれこれ弄くりまわし、ポーズをつけさせる。
「今日の記念に撮らせてね。」
と、デジタルカメラでヒカルの痴態を撮影し始めた。
 胸を大きくはだけさせたり、足を立てさせたり、白い液体で汚れたヒカルの身体を容赦なく
カメラに納めていく。それに逆らう気力はヒカルには残っていなかった。



 男がヒカルを解放してくれたのは、完全に夜が明けてからだった。男は嫌がるヒカルを
無理矢理、自動車に乗せた。男は最初に言った言葉通り乱暴な真似をせず、むしろ大切に
扱った。朝食にと、大量にパンだのおにぎりだのを買ってくれたが、だからといって、
それを食べる気分には、到底なれなかった。 
 「着いたよ。」
ヒカルが何も言っていないのに、男はヒカルの自宅近くの公園に車を止めた。どうやら、
ヒカルの自宅も行動範囲もすべて調査済みらしかった。
 無言で車を降りるヒカルを男が呼び止めた。
「あのさぁ、僕が言うのも何だけどね………」
ヒカルが、不審そうに男を見た。
「ヒカルちゃんみたいな可愛い子は夜遅く出歩かない方がイイよ。でないと、怖いヤツに
 攫われちゃうかもしれないからね?危ないだろ?」
男は、心底心配しているかのように、眉を寄せてヒカルに忠告した。そして、茫然自失の
ヒカルに向かって、「それじゃあ」と、さわやかに別れを告げるとそのまま車で走り去った。


(156)
 「…………ただいま……」
半泣き声で、帰宅を告げると同時に、雷が頭上に落ちてきた。両親は、玄関でヒカルの帰宅を
待ちかまえていたのだ。
 二時間にも及ぶお説教を、ヒカルは瞳に涙を浮かべて黙って聞いていた。
途中何度か、「遅くなった理由を言いなさい!」と詰め寄られたが、ヒカルは口を噤んだままだった。
「言わないのなら、昨日言ったとおり、門限は八時にしますからね!」
母が最後通牒を突きつけた。
「…………いいよ…」
ヒカルが小さく告げた一言に、両親は同時に「え?」と、間の抜けた声で聞き返した。
「八時でいい…」
 驚いている両親をその場に残して、ヒカルは階段を駆け上った。自室に飛び込むと、そのまま
ベッドに身体を投げ出して、ワァワァと大泣きし始めた。ドアの向こうで両親がオロオロと
心配そうに声をかけてきたが、ヒカルはそれに泣き声で返した。
 もう、絶対に一人で夜遅くに出歩いたりしない――――――ヒカルは気が済むまで泣き続けた。



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