トーヤアキラの一日 15
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───そうか、ボクは進藤の事が好きなんだ・・・・・
そう納得すると、今までのもどかしさは不思議に消え、重かった気持ちは軽くなった。
その代わりに、以前のように碁会所で会う事が出来ない寂しさがアキラを襲ってきた。
2人で碁を打つ事も、話をする事も出来ない寂しさは、これもまた今までアキラが感じた
事の無い感情で、心にポッカリと穴が開いたような虚しさと、飢餓感がないまぜになって、
ヒカルの顔を思い出しては溜息をつく毎日だった。
棋院で顔を合わせる事はあるかもしれないが、ヒカルは院生時代の仲間か、森下門下の
棋士と一緒に居ることが多いので、ゆっくり話が出来るわけではない。このまま待って
いたら4月になるまでまともに話をすることが出来ない。
アキラは、ヒカルが碁会所から怒って出て行ってしまったままになっている事も気になって
いた。北斗杯予選に出ない自分に対して悪感情を持っているかも知れない。自分が頼んで
予選を免除してもらったわけではないし、予選に出てヒカルと共に選手になれる自信は
もちろんある。むしろそうして欲しかったが、アキラの活躍と注目度はあまりに高く、
それを許さない雰囲気が囲碁界にはあるのも事実だった。
ヒカルを想って悶々とする日々であったが、気分転換も兼ねて、中国語と韓国語を習う事
にした。勉強は元々好きであったし、北斗杯のためだけではなく、先々絶対に必要になると
思ったからである。
年が明けて、久し振りに碁会所に行くと、いつものようにアキラ贔屓のお年寄りが居て、
色々話しかけてくる。笑顔で応対しながらも、ヒカルの事が話題になると、心穏やかでは
いられなかった。
───進藤に会いたい。会って自分の気持ちをもう一度確かめたい。
対局スケジュールを見ると、高段者が集まる木曜日の手合いにヒカルが出てくることが
分かった。とにかく一度ヒカルと話がしたかった。
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