戻り花火 15


(15)
「進藤、待ってやー。キップどっかに仕舞ってもーてん」
階段のほうから聞こえてきた声にアキラが顔を上げる。
アキラは心なしか首を伸ばし、瞬きもせずにその大きな目で階段から下りてくる人の流れの中を
落ち着きなく探した。
ヒカルは言葉を失ってそのアキラの顔を見守るしかなかった。
「お、あったわ、へへ。こういうのは入れとく場所決めとかなアカンな。・・・って、」
ヒカルより数歩手前で、社が足を止めた。
アキラが少し照れ臭そうに、きゅっと唇を引き結び微笑む。
「久しぶりだね。・・・社」
「・・・来てたんか。元気そうや。・・・良かった」
社もまた少し照れ臭そうに、顔を綻ばせた。
アキラはちらりと駅の時計に目をやって言った。
「キミたち二人にしておいたら、着くのが何時になるかわからないからね。
念のため迎えに来たんだよ。・・・ところで二人とも、早く出て来たら」
ヒカルと社がはっと顔を見合わせる。
二人とも改札口の手前で立ち止まったままだったのだ。

背を向けさっさと歩き出そうとしたアキラの真っ直ぐな背中を追って、夢遊病のように
切符も通さず改札口を出ようとしたヒカルはピコーンピコーンという派手な音と共に
遮断扉に足止めされた。
「うぁっ」
「うぉっ」
重なった声に振り向くと隣の自動改札機で社が同じように切符を手にしたまま足止めされて
固まっている。
ヒカルと目が合うと、社は屈託なくニカッと笑った。
どんな顔を返せばいいかヒカルが迷っているうちに、アキラが大きな溜め息をついて
またスタスタ歩き出そうとした。
「あっおい、塔矢!溜め息とかついてんじゃねェよ、たまにはこーいうことだってあるだろっ!」
「待ってや、塔矢ー!おーい、塔矢さーん!」
両肘を突き出し耳を指で塞いで足早に立ち去ろうとするアキラを、二人は慌てて追いかけた。



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