Shangri-La 15
(15)
結局、緒方は「帰るぞ」と冷たく言い放ち、振り返りもせずに車へと戻り
終始無言でアキラを家まで送った。
なぜ海へ連れて行かれたのか、アキラは聞いてみたが、答えはなかった。
自宅はやはり、一人で居るにはあまりに広過ぎた。
あまりの辛さに、誰かに縋りたいと思ったけれど、気がつけば結局一人だ。
みんな、隣にいたと思っても、次の瞬間には消えて居なくなっている。
もう、たくさんだ。
もし今度、誰かと一緒にいられる日が来たら、その時は
絶対に自分を一人にしないよう約束してもらおう。
ひとりでいるのは、もう絶対にイヤだ。
――でも、今は一人で居たかった。
もし次に誰かに縋って、その誰かもまた居なくなったらと考えると
それよりは一人の方が、失うものが無い分だけ、まだましに思えた。
夜の静寂が耳に痛くて、せめて家に両親がいればと思ったが
帰国までは、あと3日もあった。
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