平安幻想秘聞録・第三章 15


(15)
 佐為の衣の隙間からそっと相手を見たヒカルはまたもや驚いた。そこ
に立っていたのは、佐為を探しに因島まで訪ねたとき出逢った、アマの
No.1だという男。確か周平という名だっただろうか。
 これじゃ、オレの知り合いで出て来ないヤツはいないかもな。ヒカル
はまだ事態が悪い方へと転がりかけていることに気がつかない。その間
に男は一間くらいの距離まで近づいていた。
「弘徽殿の女御さまへの御用は終わられたとお見受けするが」
「はい」
「それはいいところに参った。東宮さまがぜひ大君の囲碁指南役である
佐為殿に一手打っていただきたいと。こうおっしゃられておる」
 東宮の名前に、ヒカルはびくりと身を竦ませた。うまく会わずに済ん
だと思い気が緩んでいたのだ。
「それは、身に余る光栄です。ですが、本日は所用により退出しなくて
はなりませんので」
「火急の御用か?」
「いえ、そういうわけではないのですが。約束がございます」
「ほう、東宮さま直々のお誘いを辞してまで、向かわれる先がおありか?
余程、名のある方でいらっしゃるのだろうな」
「・・・」
 あからさまに東宮を蔑ろにするのかと詰め寄られ、言葉が返せない。
下手に誰かの名を口にすれば、その相手が東宮に睨まれるのだ。うかつ
に方便を使うこともできない。
「分かりました。相手には後程お詫びの文を送ることに致します。光、
あなたは先程の部屋で待っていてくれますか?」
「オレは、いいけど、でも、佐為は・・・」



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