守って!イゴレンジャー 15


(15)
幸せ絶頂な筈の中継地点A。
コトが終わった後なのか、ヒカルは無言でズボンを身に着けていた。
その後ろで、伊角が地に頭をこすりつけながら土下座をしている。
「このとおりだ!許してくれ、進藤!」
ヒカルはちらりと冷たい視線を送っただけで、答えはない。
「本当に本当に申し訳ない!せっかくの進藤の好意を、オレは……」
「…オレ、こんな屈辱初めてだ…」
力なくヒカルは呟く。
今まで魔王や怪王や仙人と様々な猛者を相手に夜通し戦ってきたが、
百発百中!じゃなくて連戦連勝、一人残らず秘技と体位で骨抜きにしてきた。
レッドを手にした者は世界を手に入れたも同然とまで言われたプライドが、
まさか伊角によって木端微塵に打ち砕かれようとは。
「伊角さんなんて…伊角さんなんて…」
怒りに肩を揺らすヒカルの体から炎のオーラが噴き出した!
大変だ!イゴレッド、アルテマウェポン発動!!
「伊角さんなんてだいっきらいだーッ!!!」
まばゆい閃光と飛び散るスパーク!
その中から、一人の老人が現れ、伊角に睨みをきかせた。
『平八んとこの孫を泣かせたのはお前か…』
「井上さん、ゴメン、後お願い!」
ヒカルは泣きながらその場を老人に託し、足早に去って行く。
「待ってくれ、進藤ーッ!」
後を追いかけようとする伊角を、謎の老人、井上さんが力づくで引き止めた。
井上さん──それはヒカルが激昂したときにだけ発動する最終兵器、
正式名称を“クツワ町の井上さんミレニアムエディション”、
略して“井上さんme”と言う。
リーダーであるレッドにもしもの事があったら大変と急遽付け加えられた技なのだが、
井上一族と日本棋院の関係はいまだ謎のままである。
「あっ!レッド…つか、進藤!」
やっと現場に駆けつけた和谷が走り去るヒカルを目撃した。
続いて藪を覗き込んだ越智が目を丸くする。
「グリーン、見てみなよ!井上さんmeが暴れてる!」
「あちゃー、何やらかしたんだ、伊角さん…井上さんmeって確か、
 相手の息の根を止めるまで戦い続けるランクAAAの戦士じゃなかったっけ?」
「うわ、じゃあ伊角さん殺されちゃうのかな?」
「わかんね」
「お前たち、のんきに見学してないで早く助けてくれ!」
伊角の悲痛な叫び声を無視したいところだが、化けて出てこられても困るので
とりあえず和谷が伊角の代わりに応戦する。
「伊角さん、変身変身!」
「わかった!悪・手・転・身!」
伊角、見事な好手化け!
世界最強戦士井上さんmeに負けるな!好手戦隊・イゴレンジャー!!



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