金魚(仮)(痴漢電車 別バージョン) 15
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しっかり酔っているじゃないか…………
アキラは小さく溜息を吐くと、ヒカルの腕を掴んだ。
「送っていくよ。和谷君の家はどこ?」
「え〜いいよ。それより、オレ、電車に乗りたい…」
電車に乗って、いったい何処へ行こうというのだ!?
ヒカルは自分の言動が怪しいだなんて、これっぽっちも思っていないようだが、どこから
どう見ても彼はおかしい。放っておくことなど出来るわけがない。
「ダメだよ!キミ、黙って出てきたんだろ?」
きっと、友人達が心配しているに違いない。そう窘めるアキラに、ヒカルはプッと、頬をふくらませた。
「黙ってじゃネエよ!ちゃんと和谷に言ってきたモン!」
「和谷君に………?」
自信たっぷりに頷くヒカルを疑わしげに見る。さっき訊いた彼の話からは、他の友人達がどういう
状態だったのかまではわからなかった。ヒカルの話は酔っているためか、まるで要領を得ないのだ。
ただ、こんな彼を平気で外へ出すくらいだから、和谷の方もまともな状態だったとは言い難い
であろうことは容易に想像できた。
ここに来るまでに、ヒカルは何度か声をかけられたと言っていた。何事もなかったから
よかったものの、もし、その相手が質のよくない奴で、ヒカルの情況に気が付いていたらと
思うとゾッとする。攫われて乱暴されていたかもしれないのだ。
いや、それよりも、外見は可愛らしい女の子でもヒカルは本当は男だ。例え、貞操の危機に
陥るようなことにはならなかったとしても、騙されたと逆上した相手に暴力を振るわれる
可能性もあったのだ。
だけど、ヒカルはそんなアキラの気持ちなどお構いなしに、しきりに「一緒に行こう」と
ねだっていた。
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