しじま 15
(15)
「ここだ。おまえの、勃ちあがってる」
うれしそうな声だった。ボクは視線を下にやった。
進藤が勃ちあがりかけているそれに、指をすべらせていた。
二つの器官を攻められ、ボクはすっかり自分を失ってしまった。
大きく息を吸うけど、少しも息が入ってこない。
苦しくて、頭がじんじんとする。
「塔矢、気持ち良くない?」
心細そうに尋ねられた。気持ちいい、と答えたいけど、なにがなんだかわからないんだ。
「おまえ、ちっとも声を出さないから、どう思ってんのかさっぱりわかんない」
声? そうか、出したほうがいいのか。でもどんなふうに出したらいいんだ?
進藤はボクに抱かれているとき、どんな声を出していたっけ?
「……あ、あん」
わざとらしい声音に、進藤が噴き出した。
「塔矢っておもしろいな」
進藤がボクから離れたので、ボクはうろたえた。やめてしまうのか?
起き上がろうとするボクを進藤は制した。そしてボクが用意した枕元にあるコンドームの箱
を手にとった。
「しなくていい、進藤」
「ダメ。ただでさえ初めてで大変なのに、中でなんか出せない」
……ボクは初めてではないんだ、進藤。
「二箱あるな。おまえ、一箱ぜんぶ使い切るつもりだったのか?」
そうだ。本当は予備も入れて三箱おくつもりだった。絵的にみっともないからやめたけど。
「オレ、自分にするのは初めてだ」
照れくさそうに笑う進藤に、ボクもつられて笑った。
だけどすぐに進藤は厳しい顔つきをした。ちゃんと笑ったように見えなかったんだろうか。
「塔矢」
進藤はたしかめるように、もう一度ボクのなかに指を沈めてきた。
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