失楽園 15
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――まだ射精には至らない、いわゆる先走りというものだ。緒方はそれに構わず、更にヒカルの
細い体のあちらこちらに口づけを落とした。緒方の予想よりも随分と薄い皮膚を尖らせた舌で
ツツと辿ると、ヒカルはその度にピチピチと緒方の腕の中で撥ね、もう閉じていられなくなった
口許からは唾液が伝って落ちた。
アキラは固唾を飲んでその様子を凝視している。ヒカルの喘ぎが部屋の空気をより濃厚なものに
するたび、アキラは少しずつ頬の色を染め、無意識にだろう、その細い自身を抱きしめた。
「ふ………ン、」
全裸のヒカルを隠すものは緒方自身の身体の他になにもない。人工的に作られた光が、ヒカルの
尖った乳首や鎖骨、そして恥部に至るまでの陰影をより濃く彩り、彼の肢体が蠢くたびにそのコン
トラストも揺れた。
緒方は進藤の身体にいくつものキスを落としながら、ヒカルの右脚の付け根へと辿りつき、その
柔らかさを味わうかのように内側を舐めあげ、そして甘く歯を立てる。緒方の目の前には勃ちあがっ
たヒカルの砲身があり、その向こうにはアキラがいた。
緒方の手順の基本が、自分に施されるものとほとんど同じだということに気づかないアキラでは
ない。相手のリアクションが違えば自ずと変化も生まれてこようが、緒方はセックスの相手から返っ
てくる一手を自分の方で軌道修正するだけの冷静さを未だ持っていた。
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