初めての体験 Asid 15
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しかし、彼はボクの手に持っている物を見て、真っ青になり這って逃げようとした。
何でも訊くと言ったくせに…。もっとも、本人は逃げているつもりだろうが、力が
入らないためか、最初の場所から三十センチと移動できていない。
ボクは、後ろから彼をしっかりと捕まえ、自分の方へ引き寄せると耳元で優しく囁いた。
「大丈夫ですよ…何度も練習したんですから…人間相手は初めてだけど…」
耳を軽く噛んで、胸元に手を這わせた。芦原さんの身体がビクッと震えた。それだけでもう、
切なげな吐息が、口から漏れた。うん?可愛いじゃないか……。ボクは、唇と舌で彼の
首筋を愛撫しながら、胸の辺りを彷徨わせていた手を徐々に下ろした。
「はぅ…!」
芦原さんの身体が小刻みに震える。ボクが、芦原さん自身を弄び始めると、喉を仰け反らせて
悶えた。
「ああ…アキラぁ…」
もう完全に、身体をボクに預けている。芦原さんの息遣いが、密着した部分から伝わってくる。
ボクは、もう片方の手に持っていた物を、芦原さんの目の前にかざした。それを
両の手に持って撓らせる。パシ、パシと小気味いい音がした。どんな顔をして、それを
見ているのだろうか―――――怯えていることだけは、はっきりわかる。
「じっとしてください…」
後ろから抱きしめるように、手を交差させていく。
「あ…あ…やめ…」
怯えた拒絶の言葉とは裏腹に、芦原さんの表情は、少しずつ陶酔に彩られていく。
薬もよく効いているらしい。いい感じだ。
ボクはまだ初心者だし、最初は簡単なヤツにしておこう。記憶を頼りに、手に持った物を
交差させ、くぐらせる。所々で玉を作り、強弱をつけ、形を作っていった。最後に
キュッと絞り上げる。
ボクは、芦原さんの姿を、改めてじっくり見た。初めてにしては、なかなかの出来では
ないだろうか?ああ、興奮する。これが進藤だったら、ボクは鼻血を噴いて昏倒して
しまうだろう……やはり、経験を積んでから、本命に挑むべきだな。うん。
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