夜風にのせて 〜惜別〜 15


(15)
十五
「こちらです。中身のご確認をお願いします」
店員に言われ、明は深呼吸をすると分厚い台紙をゆっくりと開いた。
そこにはこれから別れが訪れるとは思えないほど、いつもの二人の姿があった。
久しぶりに見るひかるの姿に、明は泪が出そうになるのをこらえた。
代金はすでに支払われていたので、明はそれを大切に封筒にしまうとあの川へと目指した。
久しぶりに訪れた川べりの道は以前と変わらぬ風景だった。しかしひかると別れてから辛
くて行くことができなかった間に、青々とした緑や花たちが春の訪れを告げていた。
明は以前と同じ様に歩く。だがもう永遠にひかると歩くことはないのだろうと思うと悲し
かった。ひかると出会い、そして別れた場所でもあるこの道は、明にとって特別な存在だった。
明は切なげに空を見上げる。あんなに待ち遠しかった朝陽も、今では辛い記憶を思い出さ
せるだけとなった。だがひかるもこの太陽をどこかの空の下で見上げ、自分と同じ様に光
を浴びているのかと思うと、段々愛しさが増してきた。
「ひかるさん」
明は太陽にこの想いがひかるに届くよう祈った。



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