浴衣 15 - 16


(15)
えっ!  ――と、驚く間もなく、熱い湯をまとった指が僕の中に入ってきた。
「進藤!」
「痛い?」
左手は、僕の器官をゆっくりと扱きはじめている。潜り込んだ指は、躊躇いもなく例の場所を探り当てる。
「ここって、精子を作るとこと隣合わせなんだよ」
だからなんだよ! と、怒鳴りつけたかったけれど、だらしない僕の身体は敏感に反応していて、下手に口を開けばどんな声が溢れ出すかわからない状況だった。
まだ身体の中に色濃く残っていた射精の余韻が、いっせいに騒ぎ出す。
覚えたばかりの官能が恐しくて、僕は逃げるために腰を浮かしていた。だけど、進藤がそれを許すはずもなく、かえって僕は彼の太股の上に座る形になってしまった。
それは進藤の両手に、自由を与えたようなものだった。
「しん……どっ…、お湯が……」
帰ってくる答は、背中で聞く早鐘のような鼓動と、うなじにかかる荒い呼吸だ。
「ヒカルだろ?」
もう、言葉にならない。
「ふぅ…うっ……あぁ……」
進藤の指が、執拗に僕を犯す。
前で動いていた左手は、いまは一種の戒めだった。僕の絶項が近づいたのを感じるたびに、親指と人差し指は環を作り、痛みとともにそれを堰き止める。
風呂場に充満するのは、白い湯気だけではなくなっていた。僕の甘い喘ぎが反響し、それさえもが僕を耳から犯す。脳髄を蕩けさせる。
やがて、進藤がささやいた。

「いい?」

それがどちらの意味で尋ねられたのかはわからなかったけれど、僕は必死になってうなずいていた。
お湯の浮力を借りて、進藤はの右腕一本で、僕の身体を軽々と扱う。
少し身体が浮いた。
と、思う間もなく降ろされる。


(16)

貫かれる――――まっすぐに。

最初の時の衝撃はなかった。だけど、身体は大きくしなり、頭を打ち振る自分をどうすることもできなかった。
「塔矢、一緒にイキたい……」
進藤はすぐに腰を使ってきた。
僕もそれに積極的に答えていた。
だって、進藤の指の悪戯だけで、僕は焦らされるだけ焦らされて、いつ登り詰めてもおかしくない状態だったんだ。
それにね、母たちは1時間で帰ってくる。時間はない。

突き上げるように、抉るように、それはこの前覚えたゆっくりとした動きと違って、嵐のような激しさだった。
湯の面に、漣が立った。
僕たちは、白い水蒸気の中で、激しく交わりあった。
「痛くないか?」
荒い息を吐き出して、進藤はそれだけを何度も尋ねてくる。
それに何度もうなずきながら、僕は啜り泣いていた。
「いい」なんて、本当のことを口走るには、バスルームの照明は明る過ぎて、僕は子供ように啜り泣いていた。
進藤の固く張り詰めた性器が、僕を内部から追い上げる。
背中で、進藤が小さく呻いた。
進藤の左手の戒めが、僕自身から離れた。
そして僕たちは、ほとんど同時に極めていた。


その晩、進藤は初めて僕の家に泊まっていった。
遅い朝食をふたりで摂っていると、下ろしたばかりの浴衣が物干し竿で揺れていた。
その下で、赤紫の朝顔と朱赤の鬼灯が、夏の陽射しに輝いていた。
そして、僕の隣には進藤の笑顔があった。

―――――夏の陽射しそのままの、笑顔があった。


                                  ===了===



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