失着点 15 - 16
(15)
「…塔…矢」
カタカタとヒカルは小さく肩を震わせた。
まだ何が足りないのか、ヒカルには分からなかった。これ以上どうしようと
言うのだ。「…お願…い、もう…」
アキラは奥深くまで突き刺さっていた自分自身をゆっくりと引き抜き始めた。
「うう…っ」
腸内のものが外へ引きずり出されるような感触にヒカルは耐えた。
アキラはそうして体をヒカルから少し離すと、ヒカルの片足を引き上げ、
体を入れ替えさせた。
「ぐっ…あっ!」
結合させたままでヒカルの体をうつ伏せから仰向けの状態にさせたのだ。
そしてすぐさま再度奥深くヘ突き入れる。
「うう…んっ!」
あまりの仕打ちに、ヒカルの両目から涙が溢れ出て頬を伝う。
ヒカルと向き合ったアキラはそっと額にキスをし、ヒカルの涙を舐めとった。
「…一緒にイキたいんだ…。」
アキラのその言葉にヒカルは首を横に振った。
涙を滲ませた瞳で、アキラに訴えようとした。もう無理だと。
アキラがわずかに動くだけでも結合部分が引き裂けそうに痛むのだ。
だがアキラの瞳は本気だった。
アキラはもう一度ゆっくり自分自身を引き抜き、抜けそうな部分でまた
中へ突き入れる。そしてそれを繰り返す動きを始めた。
(16)
先に腸内に放出したもののために、腸壁がいくらか潤い、最初の時のような
激痛はなかった。だが相応の質量のものが狭道を行き来するだけでも
絶望的な苦痛をヒカルに与えた。
その苦しみにさえもう声も発せず、全身に脂汗を張り付けてぐったりと
なっているヒカルを見て初めて不安になったのか、アキラは動くのを止めた。
「…辛そうだね…。」
アキラは優しくヒカルの頬を撫でると唇を吸い、額、首筋とキスを運び
もう一度胸元を愛撫し始めた。左手を下腹部へと這わし、痛みの為に
萎縮しているヒカル自身をそっと握る。
親指で先端を軽く刺激する。
ピクリ、とヒカルはわずかに反応した。だが、苦しさの方が大きすぎて
多少の刺激ではもう快感は感じないと思った。
それでもアキラの柔らかな抱擁が乳首と局部に施され続けていると
断ち切れたはずの回路が少しずつ修復されていくようだった。
肛門に異物が挿入されている状態が同じ刺激に対して感覚を敏感に
させていることにも気がついて来た。
前立腺という言葉すらヒカルはまだ、知らない。
が、ここへ来てアキラの優しさに触れた事が何より大きかったのだろう。
「う…ん、んんっ」
ヒカルの吐息に甘い声が混じるようになった。
アキラの手の中で、ヒカルが熱を持ち始めた。
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