初めての体験 155 - 156
(155)
男は脱力しているヒカルの身体をあれこれ弄くりまわし、ポーズをつけさせる。
「今日の記念に撮らせてね。」
と、デジタルカメラでヒカルの痴態を撮影し始めた。
胸を大きくはだけさせたり、足を立てさせたり、白い液体で汚れたヒカルの身体を容赦なく
カメラに納めていく。それに逆らう気力はヒカルには残っていなかった。
男がヒカルを解放してくれたのは、完全に夜が明けてからだった。男は嫌がるヒカルを
無理矢理、自動車に乗せた。男は最初に言った言葉通り乱暴な真似をせず、むしろ大切に
扱った。朝食にと、大量にパンだのおにぎりだのを買ってくれたが、だからといって、
それを食べる気分には、到底なれなかった。
「着いたよ。」
ヒカルが何も言っていないのに、男はヒカルの自宅近くの公園に車を止めた。どうやら、
ヒカルの自宅も行動範囲もすべて調査済みらしかった。
無言で車を降りるヒカルを男が呼び止めた。
「あのさぁ、僕が言うのも何だけどね………」
ヒカルが、不審そうに男を見た。
「ヒカルちゃんみたいな可愛い子は夜遅く出歩かない方がイイよ。でないと、怖いヤツに
攫われちゃうかもしれないからね?危ないだろ?」
男は、心底心配しているかのように、眉を寄せてヒカルに忠告した。そして、茫然自失の
ヒカルに向かって、「それじゃあ」と、さわやかに別れを告げるとそのまま車で走り去った。
(156)
「…………ただいま……」
半泣き声で、帰宅を告げると同時に、雷が頭上に落ちてきた。両親は、玄関でヒカルの帰宅を
待ちかまえていたのだ。
二時間にも及ぶお説教を、ヒカルは瞳に涙を浮かべて黙って聞いていた。
途中何度か、「遅くなった理由を言いなさい!」と詰め寄られたが、ヒカルは口を噤んだままだった。
「言わないのなら、昨日言ったとおり、門限は八時にしますからね!」
母が最後通牒を突きつけた。
「…………いいよ…」
ヒカルが小さく告げた一言に、両親は同時に「え?」と、間の抜けた声で聞き返した。
「八時でいい…」
驚いている両親をその場に残して、ヒカルは階段を駆け上った。自室に飛び込むと、そのまま
ベッドに身体を投げ出して、ワァワァと大泣きし始めた。ドアの向こうで両親がオロオロと
心配そうに声をかけてきたが、ヒカルはそれに泣き声で返した。
もう、絶対に一人で夜遅くに出歩いたりしない――――――ヒカルは気が済むまで泣き続けた。
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