平安幻想異聞録-異聞- 156


(156)
「だから、おまえに会いに来たんだ。俺がおまえに会いたいと思っちゃ
 おかしいのか?」
「そんなことないけど…。座間から何か言われてないの?」
「いや、近衛に会いたいと昼間のうちに面会を申し込んだら、座間殿にこの時間に
 来いと言われたんだ。さっきここに着いて御挨拶した後は、何事もなく侍女に
 この部屋に通されたが。それ以外は、座間殿とはほとんど話しらしい話はして
 ないよ。にしても、近衛。佐為殿や賀茂から、意に染まない伺候だと聞いては
 いるが、仕える家の主人を呼び捨てにするものじゃない」
いつもどおり裏表のない伊角の物言い。ヒカルは肩の力が抜ける思いがした。
もしかして知らない? この部屋が、何を行なうためにしつらえられたものなのか。
自分を見つめる伊角の目の奥をのぞき込んだ。そこには、人が誰でも持っている暗い
淀みがある。だが、伊角はその心の淀瀬に足をとられてはいない。その淵に立ち
ながら、岸辺にとどまり、その暗闇を見据える心の強さを持っているのだ。
彼は多分、本当に、何も知らされされていない。
自らの暗闇に溺れていた、昨日の男達とは違う。
裏切られたわけじゃない。
まだ、この人を信じていいのだ。そう思ったら、心が軽くなった。
嬉しくて笑いたくなった。



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