悪代官−真夏の企み 16
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「わぁ〜すげえ!人が一杯だあ!な!塔矢!」
進藤が周りをきょろきょろ見回しながら、歓喜に溢れた表情でボクに話しかける。小学生
時代はポケモンマスターになるのが夢だったらしい進藤は、年齢的にはもう高校生だと言
うのに恥ずかしげも無くピカチュウのお面を首から後ろに掛けている。
「進藤…お面外したら?恥ずかしくない?」
「何で?ピカチュウ可愛いじゃん」
いや、そういう問題じゃ無いだろう。問題はキミの年齢…
「それに俺、よくピカチュウに似てるって言われてたし」
「え?」
ボクはお面をまじまじと見つめてみる。
う〜〜ん……。
そう言えば、でかい目とか頬とか口元とか…進藤をマスコットキャラクターにしたらこん
な感じか?色も黄色だし、進藤の色っぽいかも…?
「確かにちょっと似てる…気がするかな」
「お前もそう思うの?俺自身はよくわかんねーけど…ピカーッ!とか言わされたんだよな〜よく」
「……!!??」
い、今進藤が…進藤がピカチュウの真似したぁーーー!!と言うかピカチュウの鳴き声な
んか知らないけど!か、可愛い〜!!可愛い!可愛い!か・わ・イイ(・∀・)!!
「塔矢?な、なんだよお前!急にニヤって笑うなよ!怖いから!」
「あ、ああゴメン、なんとなく…」
どうやら無意識のうちに顔がニヤけていたらしい。でも仕方ないだろ?
だって進藤がピカチュウの声なんか真似するから!
「あ、塔矢!ヤキソバ奢れよな!行こっ」
芋の子を洗うように混雑した大通り、ボク達は手を繋いでヤキソバの屋台に向かった。
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