Shangri-La 16
(16)
ずっと母親に付き添っていたヒカルが自宅へ帰ったのは、
母親が入院した日から2週間後のことだった。
非常事態で体のサイクルはすっかり狂ってしまって
そんなヒカルを見かねた父親が、無理に付き添いを代わった。
ヒカルは鈍い足取りで帰宅の途についた。
一方その日、アキラの両親が帰国した。
アキラは碁会所で父と待ち合わせ、土産話を皆で一通り聞いた後
父と碁会所を出たところで、夕闇の雑踏の中に見慣れた人影を認めた。
「進藤!」
声をかけたが、少し遠かった所為か気づかない様子だった。
「進藤君か?」
「うん、お父さん、ボク進藤と話が…。ごめんなさい、先帰ってて。」
アキラは父と話すのももどかしく、ヒカルを追いかけた。
ヒカルがコンビニに入ったのが見えた。良かった、これで追いつける。
アキラがコンビニまでたどり着いたその時、ヒカルが店から出てきた。
ヒカルは目の前のアキラに気がつかず、通り過ぎようとする。
「進藤!」
「あれ、塔矢…?」
「無視するってひどいじゃないか!」
「…あ、ごめん…気づいてなかった…」
「だいたい君は何を考えてるんだ?仕事はサボってるし電話は出ないし
電話に出たと思えば勝手に切るし…一体何なんだ?」
言うだけ言って、アキラはヒカルを睨みつけた。
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