浴衣 16


(16)

貫かれる――――まっすぐに。

最初の時の衝撃はなかった。だけど、身体は大きくしなり、頭を打ち振る自分をどうすることもできなかった。
「塔矢、一緒にイキたい……」
進藤はすぐに腰を使ってきた。
僕もそれに積極的に答えていた。
だって、進藤の指の悪戯だけで、僕は焦らされるだけ焦らされて、いつ登り詰めてもおかしくない状態だったんだ。
それにね、母たちは1時間で帰ってくる。時間はない。

突き上げるように、抉るように、それはこの前覚えたゆっくりとした動きと違って、嵐のような激しさだった。
湯の面に、漣が立った。
僕たちは、白い水蒸気の中で、激しく交わりあった。
「痛くないか?」
荒い息を吐き出して、進藤はそれだけを何度も尋ねてくる。
それに何度もうなずきながら、僕は啜り泣いていた。
「いい」なんて、本当のことを口走るには、バスルームの照明は明る過ぎて、僕は子供ように啜り泣いていた。
進藤の固く張り詰めた性器が、僕を内部から追い上げる。
背中で、進藤が小さく呻いた。
進藤の左手の戒めが、僕自身から離れた。
そして僕たちは、ほとんど同時に極めていた。


その晩、進藤は初めて僕の家に泊まっていった。
遅い朝食をふたりで摂っていると、下ろしたばかりの浴衣が物干し竿で揺れていた。
その下で、赤紫の朝顔と朱赤の鬼灯が、夏の陽射しに輝いていた。
そして、僕の隣には進藤の笑顔があった。

―――――夏の陽射しそのままの、笑顔があった。


                                  ===了===



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