身代わり 16


(16)
いつのまにか冴木のものはヒカル以上に張りつめていた。
その処理方法は、一つしか思い浮かばなかった。
「ぃてっ! 冴木さん!?」
ものすごい力で引き倒され、背中に痛みがはしる。しかしそれよりも冴木が気になった。
冴木は体重をかけながら、ヒカルのトレーナーをまくりあげ、その腹に吸いついた。そして
ふたたびヒカルの下肢をさらそうとした。
ヒカルはかかとでのしかかる冴木を蹴った。しかし怯むことがない。
「ちょっ……! ヤダッ」
《やめてください! 冴木さん!!》
佐為とヒカルは言うが、もちろん冴木にはその言葉は入ってこない。
やめる気など毛頭なかった。
「っうあっ!」
歯を立てられた。痛くて何とか逃れようとするのに、冴木は放してくれない。
さきほどと変わって嫌がるヒカルに冴木は苛立つ。
ヒカルをはがいじめにし、手探りで胸の突起を探し当てると、それを強くつまみあげた。
「痛いっ! 痛いってば!」
執拗に乳首を攻め立ててくるが、ヒカルは少しも気持ち良くなかった。
「少しくらいいいだろっ」
「なにが!?」
怒声にヒカルはたじたじとなる。冴木はなにがしたいのだろうか。
とにかく早くこの状態をなんとかしなければ。ヒカルは出口に向かって這いずりだした。
しかし足をつかまれ引き戻された。すごい力だった。
このままだとやばい。なにがやばいか具体的にはわからないが、とにかくそう思った。
佐為はヒカル以上にこの危機にうろたえていた。
《ああ、どうしましょうっ》
自分にはなにもできない。万事休すだ。佐為は涙目になった。
そのとき、柔らかな声が聞こえた。



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