落日 16
(16)
彼らは親しげに会話を交わしている。
けれど、ふと会話が途絶えると、少年は目の前の友人でなく、どこか遠くを見ている。
視線を引き戻すように肩を掴んでこちらを向かせる。
視線が絡み合う。
けれど少年は目の前の友人ではなく、彼を通り越して逝ってしまった想い人の姿を探す。
自分を見ない少年に怒りがこみ上げる。
けれど、手にした肩の細さに、虚ろな大きな瞳に、儚げなその姿に、怒りと共に別の感情がひたひたと
胸に寄せてくる。それは無理矢理にでもこの目を己に向かせようという強烈な情念だ。
虚ろに中空に視線を投げやっていた少年は、突如、目の前の友人の暗い欲望に気付き、そこから逃げ
ようと身体を浮かす。その腕を掴んで引きとめると、彼の身体が横倒しに床に倒れる。
そのまま逃げようとする身体を後ろから掴まえる。
「嫌だ、やめて!」
拒む言葉など耳にも留めず、身体を押さえつけ、衣を引き裂く。
あらわにされた白い背に、ぞくりと震えを感じる。
暴れる身体をものともせず身に纏っていたものを全て剥ぎ取り、仰向けに四肢を押さえつける。
「どうして……」
彼は、信じられない、と言った目でこちらを見ている。
怯えの混じった眼差しに、情欲を煽られる。
逃がしはしない。
騙されるものか。
何も知らぬ、稚い子供のような顔をして、無力な子供が助けを求めるようなふりをして、男を誘う。
そうやって幾人の男を己の闇に引き摺りこんできたのだ。
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