少年サイダー、夏カシム 16
(16)
「オレ達、友達だろう? 約束だからな」
和谷は喜びのあまりヒカルに抱きつこうとした。しかしそれを調子に乗るなとでも言うようにヒカルの手が待ったをかける。
「言っておくけど・・・完全におまえを許したわけじゃない。本当はすっげームカツクし、ぶん殴ってやりたい気分だ」
和谷はガクッと肩を落とし、頭をたれた。そしてやさしい言葉をかけられ、つい舞い上がってしまった自分の単純さに呆れ、腹をたてた。
「けど、・・・それよりも」
ヒカルは突然涙声になる。和谷が顔を上げると、そこには今にも大声をあげて泣き出しそうなヒカルの顔があった。
「もう・・・、誰かが自分のそばから消えるのは、嫌なんだ・・・」
ヒカルは布団で顔を隠すと、声を押し殺して泣いた。
和谷はその脆く儚い姿を痛々しそうに見つめる。
「誰か大切な人がいなくなったのか?」
状況を理解できない和谷はそう尋ねた。しかしヒカルはひっきりなしに泣くばかりで答えない。
和谷は黙って泣き止むのを待った。
「病気のせいかな。涙が止まんねーや」
ヒカルは止められない涙を病のせいにして笑った。
「進藤、辛いことがあるなら何でも相談しろよ。オレが解決できるような問題じゃねーかもしれねェが、話せば少しは楽になることだってあんだぞ」
それを聞いたヒカルは、布団から顔を出して和谷を見た。一瞬何かを言おうと口を開いたが、すぐにまた布団の中へもぐってしまった。
「・・・無理に話さなくてもいいよ。けどさ、オレこんなおまえを放っておくなんてできねェ。散々なことしといてこんなこと言う資格無いかもしんねェけど、辛かったらいつでも言えよ。力になるから」
和谷は誠意をこめて言った。ヒカルがサンキュと小さく言うのが聞こえる。
「あ、けど盆の時期は勘弁な。母親の実家に手伝いに行くんで、ちょっと忙しいんだ」
和谷はすまなそうに頭をかいた。
「お盆!?」
ヒカルは突然起き上がった。
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