初めての体験+Aside 16
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最悪な気分で戻ってくると、ヒカルとアキラは十秒碁を再開していた。
「あ、社。先にやってるよ。」
ヒカルが笑顔で迎える。
「進藤、よそ見しない!」
アキラがヒカルを叱った。そして、社を見て、フッと笑った。
社は赤くなった。自分が今何をしてきたのか、見透かされている。
『そうや!進藤で抜いてきたんや!悪かったな!』
二人の打つ碁を見ながら、社はこの超早碁勝ち抜き戦に賛成した自分を後悔していた。
アキラに提案されたときは、単純に面白そうだと思って参加したのだが…一晩中打ち続ける
というのはどうも無謀だったような気がする。
社は学校が終わるとすぐに、東京へ出てきたのだ。精神的にも体力的にも疲れていた。
だが、ここで戦線を離脱するのは嫌だった。
自分が今倒れたら、アキラはヒカルをガンガンにヤリまくるに違いない。しかも、社の
すぐ側で…。
アカン!それだけは絶対イヤや!
かといって、ヒカルが離脱すれば、自分はアキラに喰われてしまう。それもゴメンだ。
一番いいのは、アキラが抜けることだが、そんなことはあり得ない。ヒカルと自分を
二人切りにするわけがない。
絶対塔矢はオレを道連れにする…どんな手を使っても…
この対局は、パリ・ダカールラリーよりも過酷かもしれへん…。
社は戦慄した。二十四時間耐久レースは始まったばかりだった。
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