月明星稀 16


(16)
突然、怖くなった。
彼の想いを受ける資格など無いように思えた。
「アキラ……」
「なに?ヒカル。」
「本当に、俺でいいのか?」
「そんな事……」
なぜそんな事を言うのかわからないと、訝しげにアキラはヒカルを見る。
けれどヒカルはアキラから目を逸らし顔を背け、彼の胸を押し戻した。
「だって……どうして?」
どうして、こんな俺を好きだなんて言える?
「俺は汚い。」

「おまえは知らないだけだ。俺は汚い。どうしようもなく汚れてる。
おまえが好きになるような価値なんてないんだ。」
「……本気でそんな事を言っているのか?」
片手で離れようとするヒカルの肩を掴み、更にもう片方の手で、アキラから目を逸らそうとするヒカルの
顎を捕らえる。黒い瞳の奥の炎にヒカルはたじろぎながら、逃れる事が出来ない。
「価値だって?
何でその価値を量ろうというのだ。
何に価値があり、何に無いと言うのだ。
愚かしさも、激しさも、情の深さも、全部含めて君が好きだ。
佐為殿を愛してた君も、彼を失って闇に堕ちていった君も、全部君だ。その君の、全てを愛してる。
君以外の誰も、僕の心をこんなにも動かせる人はいない。ヒカル、」
「それだけじゃない。おまえの知らない事だってある。俺は汚い。汚くてずるい。」
「そんなの、僕だって同じだ。それとも君は僕は全然汚くないとでも思っているのか?」



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