16 - 17


(16)
バイブ音は夜の静かなトイレの中で鳴り続け、ヒカルの祈りも虚しく、背の低い方がそれに気付いてしまった。
「おいおい、塔矢三段の携帯が鳴ってるぜぇ?誰からだろうなぁ?」
そう言って名残惜しそうにヒカルの股間から顔を離すと携帯をポケットから取り出し、ディスプレイを覗きこむ。
「芦原…だって。あの塔矢門下の奴か…」
ヒカルは誰でもイイからとにかく助けてほしかった。芦原ならヒカルだってしらない仲じゃない。きっと助けにきてくれる!
「芦原サンっ!?かっ、貸してっ!」
「ばぁーか。見せてやんねーよ!」
男はそう言い放って携帯をトイレの壁に投げつけた。携帯は壊れることはなかったが、今やトイレの隅の、ヒカルが手の届かない場所にいってしまった。やっと意識のはっきりしたヒカルは精一杯男を睨みつける。今にも飛びかかりそうなヒカルに、押さえ付けている男の腕にも力がはいる。
「いいねぇ、その目。そそられるよ。」
背の低い男が、満足そうに目を細め、厚めの唇を舌なめずりする。その顔が、ヒカルに生理的に受け付けられない。こんな奴に弄ばれていると思うと気が遠くなる気がする。
「その携帯さぁ、夕方、棋院で拾ったんだよねぇー。僕はヒカルクンの方が好みなんだけどさぁ、そいつが塔矢クン大好きだから、こうやってヒカルクンとも遊べるようにしたんだよぉ。良い計画だろ?ハハ」


(17)
サァッ。ヒカルの顔色が変わった。頭から血が引いていく。
ようやく事態が飲み込めてきた。
こいつら塔矢を――。
ヒカルはぎゅっと唇をかみ締めた。
意識を失っている間に、どれだけ時間が流れたのか分からないけれど、いつも待ち合わせている時刻はとうに過ぎているに違いない。
塔矢が来る、何も知らずに――。それだけは確実だった。
(塔矢!来ちゃダメだ!!)
祈るような気持ちで、ヒカルは心の中、一人叫んだ。



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル