Pastorale 16 - 18


(16)
道を外れて、先程ヒカルが木の上から見つけたスポットに分け入る。
ぐるりと辺りを見回して、ヒカルは、うん、と頷いてからリュックの中からガサガサと取り出したレジャー
シートをばさっと広げた。
「キミ、そんなものまで持ってきたのか。用意がいいな。」
半ば呆れ口調で言うアキラに、ホラそっち持って、と言って二人がかりでシートを広げ、四隅に荷物や
靴を置いて、その上にどっかと座り込み、アキラを手招きした。
「さあ、メシだメシだ、腹減った〜」
言いながらリュックの中から次々と食べ物らしきものを取り出し、
「じゃーん!」
と、その中の一つを得意げにアキラに突きつけた。
「サンドイッチ?」
「うん、ローストビーフサンド。美味そだろ。
ウチの近くの店なんだけどさー、こないだテレビにも出てたんだぜー。って言っても隣駅だけどな。」
と自慢げに言い、
「オマエ、こーゆーの好きだろ。」
にこっとアキラに笑いかける。
「限定発売とかでさ、昼に行くともう無くなってんの。今日は買えてよかったぜ。
絶対好きそうだと思ったんだ。」
確かにその通りだ。
もしかして今朝ちょっと遅刻したのは、わざわざ途中の駅でコレを買ってきたからだって言うんなら、
仕方がない、許してやろう、とアキラは笑う。が、
「それと〜、」
デニッシュやら、プラスチック容器に入ったデザートやら、更にはスナック菓子やチョコレートの類まで
次から次へと出てきて、アキラは少し呆れた。
「二人分にしちゃ多すぎるんじゃないか?」
「いいじゃん、余ったら持って帰って食えばいいんだし。足りないのってヤなの。
それにオマエはもっと食ったほうがいいぜ。」


(17)
「それと、コレな。」
といってヒカルは駅前で買ったワインを出してウィンクする。
「ちゃんとふた開ける奴ももらってきたし〜」
「進藤、できるか?」
「できるよっ!これくらい!できるから手ぇ出すな!」
ボトル上部の覆いをペリペリ剥がし、それから慎重にコルク抜きをねじ込ませていく。
奥まできっちりねじ込んで、片手で瓶を押さえて抜こうとして、ヒカルは顔をしかめた。
「うわ、キッツイ…」
コルクが乾燥しているのか、中々抜けそうにない。
「んーっ!」
真っ赤な顔をして格闘しているヒカルに、アキラがとうとう手を出した。
「ムリだよ。ボクが押さえてるから、引っ張って。」

「せぇの、」
二人がかりで取り掛かると、やがてギシッと小さな音を立ててコルクが動き出した。あ、気を付けて、
とアキラが制止する間もなく、呆気なくコルクは抜け、反動でボトルが倒れそうになるのを、間一髪、
アキラが押さえたが、揺れたはずみで少しだけ手にかかってしまった。
それをペロリと舐めとりながら、アキラはあることに気付いた。
「あのさ、」
と、額の汗を拭っているヒカルに問いかける。
「グラスは?」
ヒカルはぱたっと動きを止めてアキラをまじまじと見る。
「………………ない。」
「……よね。紙コップとかだって…」


(18)
「コルク抜きまでは頭は廻っても、その先は思いつかなかったって訳か。」
とは言え、思いつかなかったのは自分も同じなのだから、ヒカル一人を責められない。
「うーん……」
どうしよう、とワインボトルを見ているアキラに、ヒカルが屈託なく言い放った。
「いいじゃん、このまま直接飲めば。」
けれど、アキラはあからさまに嫌な顔をしてヒカルを見返す。
「何だよ、オレが直接口つけたのなんて汚くて飲めない?」
「そんな事は言ってないけど、行儀が悪い。」
「じゃあ、飲まない?」
そう言ってボトルをもって見上げると、アキラがムッとした顔を返す。
ホントは飲みたいくせに。だってこれ、どっちかっていうとオマエのために買ったんだぜ?
オマエがよく肉には赤ワイン、とか言うから、ローストビーフに合わせてわざわざ赤買ったのに。
オレはそんなに飲めねぇし、ほんとゆーと、コーラとかの方がホントは好きだし。
(ふん、どーせ塔矢に比べるとオレはガキだよ。)
それにこんなとこで行儀がどうこう言ったってしょうがないじゃん。
ヒカルはアキラをちらと見ながら、そのままボトルを口に運んだ。



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル