Shangri-La第2章 16 - 18
(16)
乞われるまま緒方がベッドに潜り込みアキラを背中から抱くと、
アキラはほんの少し身体を捩って
安らかな幸せをその口元に浮かべて見せた。
幼かった時代にはこんな表情のアキラを見た記憶もあるが
関係を持つようになってからは特に
緒方の前でそんな表情を見せる事はなかったように思う。
―――思えば、幼いころから無意識に自分を抑える術を
身に付けていたアキラには、海外を飛び回り留守がちの両親にも、
のっぴきならない事情とやらでバイトに明け暮れる恋人にも
淋しいからそばに居て欲しいと訴えることは出来なかったのだろう。
そんなところが『大人しくて聞き分けの良い子』として
周囲の大人達に愛される所以でもあったろうが
若いころの緒方の目には、渡世術に長けた
子供らしくない子供と映っていたのも事実だった。
しかし今にしてやっと、その憐れさを緒方は感じていた。
と、アキラが微かに身体を揺らした。
「ん………」
どうやら、キスのおねだりらしい。
なんとなく沸いた薄っぺらい憐憫の情から、緒方は
孤独を抱いた憐れな子供へ、望むまま与えた。
(17)
唇が塞がれると、待ち焦がれたアキラは両腕をその首に絡めた。
アキラが伸ばした腕の先には、確かに自分を抱き締めてくれる人がいた。
煙草の匂いが鼻を掠める。
自ら差し入れて絡めた舌からビールの苦味が伝い、
唾液の混じる音が脳髄にまで響くようだ。
触れる肌も、その奥の熱も、体中を弄る手の感触すら
身体中に過ぎるほどの幸せをアキラにもたらした。
一瞬のうちに身体中から熱が放出される感覚に酔い
やっと捕らえた雄を夢中で貪った。
溢れることすら出来ず体内で増幅されていくばかりの熱に
アキラが夢中で浸る中、不意に緒方はアキラを突き放した。
「アキラ。もう、おねだりの仕方も忘れたのか?」
始めは何が起きたのか分からないといった様子で
ぼうっとしていたアキラだったが、その視線に
焦点が定まってきたのを見て取った緒方は、促すように
枕を背にして身体を起こし、膝を立てて開いた。
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「ようし、いい子だ…」
アキラは緒方のバスローブの前をはだけさせると
その膝の間に滑り入り、その場にかがみ込んだ。
口いっぱいに頬張った緒方の肉棒は大きくて顎がきつかったが
それがこの後埋め込まれると思うだけで期待で胸が膨らむ。
しかも優しく褒めて貰えて、頭まで撫でてもらえるなんて
嬉しくてたまらなかった。もっと可愛がってもらいたくて、
アキラは菊門の疼きを堪えるように腰を振り
湿った淫らな音を立てて、懸命に緒方の肉棒にむしゃぶりついた。
緒方がぴくりと反応して、また少し大きくなった。
もう少し頑張れば、緒方の指が入口に伸びて、
もういいぞ、と言ってもらえるはずだ。
更に音を立て口で緒方を扱くアキラの頬が、
緒方に見えない場所で少し緩んだ。
緒方は目を細めてそんなアキラを見つめていた。
関係を持っていたころのアキラはどこか淡泊だったからか
今この目の前の必死さがなんとなく愛おしい。
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