光彩 16 - 18
(16)
緒方の体の下で、アキラはうめいた。
緒方はいつもより乱暴にアキラをあつかった。
アキラは緒方に責められながら、ヒカルを思った。
緒方がヒカルに何かするのではないかと、考えのまとまらない頭で考えていた。
いつもは冷めている緒方が、今日は熱くなっている。
自分とヒカルとのことが原因だとわかっていた。
都合のいいときだけ利用しているのは、緒方の方だと思った。
アキラが何をしようと我関せずのような顔をしておきながら。
普段、放っておいて、離れかけたら力で支配しようとしている。
ボクのことなど好きでも何でもないくせに・・・!
緒方さんは進藤を気に入っている。
その進藤にボクが近づいたから・・・。
とりとめのない考えが、次から次へ浮かんでは消えた。
「進藤のことでも考えているのか?」
強い力で顎を捕まれ、緒方の正面に向かされた。
アキラは緒方と見つめ合う形になった。
激しく突き上げられながらも、アキラは気丈に緒方を睨んだ。
「あいつは、こういったことは何にも知らなさそうだな。
可愛がって一から仕込んでやるのも楽しそうだ。」
アキラは、緒方を殴ろうと手を挙げた。
だが、簡単に手を捕まれ、そのまま押さえつけられた。
緒方は、ヒカルのことをわざと口にして、アキラをなぶった。
いつも冷静なアキラが、ムキになるのをおもしろがっているのだ。
「し・・・進藤に何かしたら・・・絶対に許さない・・・!」
アキラは、切れ切れの息の下から、そう緒方に言い放った。
(17)
今までになく緒方は熱くなっていた。
自分を睨み付けてくるアキラのあの瞳・・・。
背中を逆撫でされたような気がした。
ヒカルの名前を出すだけで、アキラの体がカッと熱くなる。
ゾクゾクした。
この玩具にはこんな遊び方があったのだ。
これが正しい方法だったのだ。
緒方は、アキラをなぶり続けた。
残酷に責める自分に酔っているのかもしれない。
しかし、アキラへの言葉とは裏腹に、
緒方は本気でヒカルをどうこうする気はなかった。
じゃれついてくる可愛い子犬。
可愛がりこそすれ、乱暴な目に遭わせる気はなかった。
優しく頭を撫で、好きなだけ甘やかしてやりたいと思った。
だが、すでに飼っているプライドの高い子猫が、その子犬に執心している。
子犬の方も自覚はしていないが、子猫に恋心を抱いている。
それは、緒方にはおもしろくないのだ。
おまけに子猫は、緒方になつかず、本気で爪をたててくる。
傷つけてやりたい。めちゃくちゃにしてやりたい。
加虐心がわいてくる。
一番効き目のある方法を考えた。
やはり、ヒカルを使うのが一番効果的だろう。
(18)
ヒカルはベッドの中で、緒方の言葉を反芻していた。
―もう答えはでている―
どう言う意味だろうか。
昨日も今日も、眠れないくらい考えているのに。
それでも、全然わからないのに。
「答えなんて、でてねぇよ。」
ヒカルは呟いた。
―君が好きだ―
不意に、アキラの告白を思い出した。
アキラの顔が浮かぶ。
まっすぐに自分を見つめる切れ長の瞳。
その視線にからめ取られたまま動けなくなった。
アキラの顔が間近にせまる。
唇が触れた。
ヒカルは唇をそっとなぞった。
アキラがふれた唇。
カッと体が熱くなった。
考えがまとまらない。頭が混乱してきた。
寝苦しい。
ヒカルは何度も寝返りをうったが、そのうちに、眠ってしまった。
夢の中にアキラが出てきた。
アキラのことを想いながら眠ったせいだろうか?
誰かが髪を撫でてくれたような気がしたが、
瞼が持ち上がらなかった。
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