少年王アキラ 16 - 20
(16)
オガタンは、座間に侮蔑の混じった冷たい視線を投げつけると、くるりと背を向け、アキラ王に向き直った。
座間はそんなオガタンの冷たい態度に、レェスのハンケチを噛み締めた。
オガタンは、身悶えする座間を無視してアキラ王に話しかけた。
「まあ、これの使い方を教える前に、一つ私がアドバイスを…」
「アドバイス?」
アキラ王が怪訝そうに聞き返した。この男はそんな親切な人間だっただろうか?
「あなたはいつもレッドに直球勝負…しかし、時には変化球も必要なのです。」
オガタンの言わんとしていることが、聡明なアキラ王にはすぐにわかった。
「変化球と癒しの薬の合わせ技でレッドをモノにするのか?」
オガタンが大きく頷いた。
「でも、せこい手は使いたくない…」
アキラ王は、愛するレッドにピ―――の小さい奴とは思われたくなかった。
「クックックッ…甘いな…!愛とは奪い、奪われるモノ…どんな手を使っても
手に入れた者の勝ちです。クックックッ…」
ニヒルというよりは、邪悪な笑いをオガタンがアキラ王に向けた。
そんなオガタンの姿に、座間はますます顔を赤らめ、体をくねらせた。
(17)
「さあ…アキラ王。貴方はレッドと愛の楽園−ラッヴ・パラダイスを築きたいのでしょう?
そのためには、彼を常にリードしなくては。愛に不慣れなもの同士の恋愛は、
えてして長続きしないものだからね」
ハマグリゴイシの背を撫でながらオガタンは偉そうなことをほざいている。
それにしても、未だに独り身のオガタンも愛に不慣れのだろうか。
『そんな不器用でカワイイ兄貴、茂人が慰めてあげたいっっ』
今日の食事当番の茂人は親友の506と一緒にスピーカーから流れる
オガタンの声に耳を傾け、デザート用のバナナを潤んだ熱い瞳で見つめていた。
(18)
オガタンは、王室の主治医でもあった。
少年王が幼い王子の頃から、心と体の発育を見届けてきた。
王国には、王室の者に先祖代々仕えてきた性欲処理専門機関がある。そこはありとあらゆるプレイのプロフェッショナル機関である。
王子の寝室フロアーの奥にも、王子が10歳のころから、王子を慰める為に、選びぬかれた少年少女たちが用意されていたが、アキラ王子はその部屋へ行くのを恐がり、
「オガタンとようこさん(ウサギのぬいぐるみ・現在12歳)と一緒におねんねするっ!」
といって聞かなかった。
オガタンと手を繋いでないと寝付かれない王子であった。
「あの王子がいつの間にやら……」
オガタンは複雑な心境であった。少年王は体の欲求はあるものの、それを、どう処理していいのか、あるいは愛の営みというのはどういうものなのか、をまるで知らない。
最近、少年王が無意識に、股間をハマグリゴイシや城内の柱に擦りつけているのを見るにつけ、まるで盛りのきた猫が、相手が見つからずにその身を捩っているようで、見てるほうがツライものがあった。
少年王の無知は、オガタンにも責任があった。
少年王の性教育を任されながらも、その時を伸ばし伸ばしにしていたオガタンである。……が、ついにその時はきた。
「到着までにはまだ、間がある…では少年王、別室のほうへ。」
小瓶を手にオガタンが少年王を別室へいざなう。
少年王は、頬を紅潮させ、少し緊張した面持ちでそれに従った。
「ついに、ついにその時が!」オガタンの低く通る声を腰に浴びながら座間は、再び激しくその身をくねらせた。
キッチンの茂人と506もゴクリと唾を飲み込むと、無言でファスナーを降ろし、イチモツを手にその状況を見守った。
(19)
アキラ王とオガタンが通る場所にはスポットライトが当たるように設計されている。
2人の歩く少し先を、ピンクのネオンがくるくると乱舞していた。
「オガタン…でも、ボクね」
アキラ王はオガタンと繋いだ小指をるんるんと振りながら、小首を傾げた。
「なんですか?」
「レッドと愛し合うまで、ずっとピュアでいたいんだ…」
アキラには夢があった。
いつしかの朝、2人見つめあう赤い染み。
『初めてだったんだ…?』
はずかしそうに俯くレッドを抱き寄せ、『実は、ボクもだ』と笑うという夢を。
オガタンは後ろに倒れそうになるのを、腹筋に力をグッといれてどうにか堪えた。
「アキラ王、大丈夫だ」
「え?」
「キミのぞうさんはこれからもピュアだ」
(20)
アキラ王とオガタンは、ある一室の中へと入った。
アキラ王が休息をとるための部屋である。
城のプライベートルームとは比べものにもならないが、それでも他の者たちの部屋の
何倍も広く豪華であった。
オガタンがアキラ王の肩を抱いて、寝台の方へと促した。
アキラ王はそれまで黙ってオガタンにされるがままだったが、思い切って
自分の心の中にある疑問を口にした。
「オガタン…さっきオガタンはレッドは百戦錬磨と言っていたが…やはり…
レッドは経験済みなのだろうか…ボクの夢は叶わないのだろうか?」
アキラ王は悲しげだった。切れ長の瞳に涙がにじんで見えた。
シモタ━━━━━━━(゚Д゚;)━━━━━━━!!!!
アキラ王は聞き流していたように見えて、しっかり憶えていたのだ。
オガタンは、ついうっかりと本当のことを言ってしまった自分を激しく叱責した。
『ばか!ばか!俺のばか!』
何とかごまかさなければならなかった。オガタンは、アキラ王に背中を向けた。
「ち…違いますよ。レッドは浚われなれていると言いたかったのです。
浚われることにかけては、右に出るものがいないぐらいのレッドを
簡単に手に入れることは出来ない…そう言うことです。」
苦しい言い訳だった。そう言うことって、どういう事なんだ。意味が通っているのか
いないのかわからないと自分でも思った。さすがのオガタンも、こんな大ウソを
アキラ王の顔をまともに見て話すことは出来なかった。
「本当か!?そうか…!」
予想に反して、アキラ王は喜びに弾んだ声を出し、オガタンの手を引っ張った。
「さあ、オガタン。さあやろう!すぐやろう!早く!ここで経験値をためて、
レッドを手に入れるんだ!」
アキラ王のキラキラ輝く瞳に、オガタンはたじろいだ。
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