Tonight 16 - 20


(16)
ボォー…ン…

廊下の奥から柱時計の音が響いて、次の瞬間、オレたちは互いの身体を抱きしめあっていた。

塔矢。
ああ、塔矢。
塔矢の肩。塔矢の背中。塔矢の髪。塔矢の匂い。
オレを抱く塔矢の腕。腕にこめられた力。
これが、塔矢。
気が遠くなりそうだ。
意識を保とうと塔矢を抱いた腕に力を混める。
そうすると同じように強く抱き返される。
柱時計の音は12を数えたら長い余韻を残して闇に消えてゆき、そしてまた静寂だけが戻ってくる。
いや、残されたのは、互いの胸の間で響いているオレと塔矢の心臓の音。
確かに生きてここにある証のように、強く激しく脈打っている鼓動の響き。
恐る恐る、ほんの少しだけ身体を離して、すぐ近くで塔矢の顔を見つめる。
同じように塔矢もオレを見ている。
目を閉じてゆっくりと、すぐそこにある唇を、そっと、重ね合わせる。
触れ合った瞬間にビリッと電流が走ったような気がして、はっと目を開けて唇を離した。
同じように塔矢も大きく目を見開いてオレを見ている。
さっきよりも更に近くで見る塔矢の目に、飲み込まれそうになる。
いっそ飲み込まれてしまいたいと思いながら逃げるように目を伏せ、もう一度唇を重ね合わせた。
そうして感じた塔矢の唇は柔らかかった。


(17)
もっと。もっと欲しい。
もっとたくさん。もっと深くまで。
布団に倒れこんで転がりながら、貪るように口を合わせ舌を絡めあい、互いの身体を探る。
こんなん、邪魔だ。オレの手が、塔矢の手が、オレ達を隔てる邪魔な布を乱暴に引き剥ぐ。パジャマ
のボタンが引きちぎれて飛んだような気もしたけど気にしない。
下着も全部取り払って投げ捨て、素っ裸になったオレ達は一瞬見つめ合い、それから腕を伸ばして、
もう一度互いの身体を強く抱きしめた。
直接触れる塔矢の素肌の感覚に、食い込むように強く抱きしめる腕の力に、頭がぐらぐらする。
こんなにドキドキいって、心臓が壊れちゃうんじゃないかと思った。
こんなに身体が熱くって、病気なんじゃないkと思うくらいだった。
でも、塔矢の心臓もオレと同じくらいドキドキしてて、そして塔矢の身体もやっぱり同じように熱くって、
オレも塔矢も同じなんだってわかって、それが嬉しくて、目を閉じたまま塔矢の頭を探り引き寄せて、
キスをした。


(18)
指の間をサラサラ滑る髪。熱く荒い息。汗ばんだ皮膚。
オレが塔矢を探る間に塔矢の手はぐしゃぐしゃとオレの髪をかき混ぜ、息継ぎをするために離れ
ようとしたオレの頭を強引に押さえ込み、そしてもう片方の手はオレの身体を確かめるように腕を
掴み肩甲骨をなぞり、背筋を伝って降りて、腰骨を、脚を掴む。塔矢の上に乗っかる形になった
オレは塔矢の頭を抱え込んで塔矢の口の中を貪る。
塔矢の上に馬乗りになってたオレは、でももっと全身で塔矢を感じたくて膝の力を抜いて全身の体重
を塔矢にかけるようとして、そこにあったモノに、一瞬、驚いて、それからもっとそいつを感じたくて、
塔矢の身体にびったりと張り付く。
オレの腹にあたる熱く硬く、ビクビクと動く塔矢の存在を感じてオレの頭は沸騰する。
脚を絡めるように割り込んで、同じくらい熱くいきりたったオレを擦り付けると塔矢の身体がビクンと
跳ねた。胸から腹までぴったりとくっつけながら身体全体を揺するようにすると、オレ達の間でそいつ
らは別の生き物みたいにぐいぐいと互いを押し合う。
もう、気持ちいいとかそんなのを通り越して、何が何だかわからなくなる。
自分の手でそいつを刺激するのなんかとは全然違う。
熱くぬめる塔矢のソレが、同じくらい熱いオレとぶつかり合って、擦れ合って、ぐちゃぐちゃといやら
しい音を立てている。そいつらをもっと絡ませるようにオレが塔矢の上で夢中になって動いていたら、
乱暴にソレを掴まれて、一瞬、オレの動きが止まる。え、と思う間もなく、塔矢の手がオレのと塔矢の
とを一緒にぎゅっと握りこんでいた。
塔矢の、あの、手が。
見えないところで、オレを掴んでる塔矢の手を想像しただけでオレは一気に膨れ上がり、そして、オレ
と塔矢は、多分、同時にイッた。


(19)
二人とも、ぜいぜいと息をつきながら、重なり合ったまま動けずにいた。
大きく上下する塔矢の胸の上で、オレは塔矢の呼吸をリアルに感じる。

まだオレ達に添えられた手に、そっと自分の手を重ねる。
ぴくん、と塔矢の肩が動いて、塔矢が薄く目を開ける。
目尻には涙が滲んで紅くなってて、潤んだ目元が壮絶に色っぽいと思った。
そう思った瞬間、さっきあれだけ吐き出したばかりのオレの分身がずくんと痛んだ気がした。

もしかしたら、あの時塔矢はもうそれでいいと思ってたのかもしれない。
でも、オレはまだだった。まだ、足りなかった。


(20)
力を失った塔矢を軽く握りこむと、塔矢はきゅっと目をつぶって顔を横に向ける。
そんな些細な仕草に、また、どくん、と血が集まるのを感じる。
ゆっくりと塔矢の片膝を立たせ、脚の間のその向こうの塔矢の身体の奥を探る。ぼんやりと反応の
なかった塔矢は、オレの指がそこに押し入ろうとした時、はっと目を見開いてオレを見た。
オレがこれから何をしようとしているかわかったんだろう。
塔矢の身体が硬くなり、塔矢の目が真っ直ぐにオレを見た。
その黒い瞳を、オレも真っ直ぐに見返した。
塔矢を見たまま、また指でその周辺をぐるりと撫で、指先を軽く押し入れる。そして問いかけるように
ただじっと塔矢の目を見ていたら、塔矢は目を閉じて身体の力を抜いた。

時々ビクンと塔矢の身体が強張る。でもすぐに塔矢は深く息を吐いて、できるだけ力を入れないように
身体を緩める。塔矢の協力を得て、オレの指はゆっくり塔矢の中に入っていく。そのままだとさすがに
入れ辛いので、塔矢とオレがさっき吐き出したものを指にとり、そのぬるりとした感触を味方にして更に
指を進めながらゆっくりとそこを押し広げていく。



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