チャイナ(タイトル未定) 16 - 20


(16)
アキラはヒカルを抱え上げるとその下に自分の身体を滑り込ませ、反論を待たずに
自分の欲望の徴をその華奢な身体に突き立てた。
「……ぁ!」
ヒカルの身体が大きく仰け反る。
全くといっていいほど馴らされていないそこへの急な刺激に全神経が集中した。
痛いと言うよりは、熱い。
火掻き棒を突っ込まれたように、激しい熱が内部をじりじりと灼いていく。
余りの衝撃に呼吸を忘れたまま、ヒカルは唇を戦慄かせた。
不意に中のモノがぞろりと動いて、それは自分の腰が持ち上げられた所為だと気付いた時には、
それはまたも深い内部に打ち据えられていた。
殆ど声にならない悲鳴を上げて、ヒカルは身を捩る。
ただ怖かった。一切の愛情も、快楽も消え失せて、残ったのは激痛と恐怖。
ヒカルは完全に恐慌状態に陥っていた。
アキラが何を考えているのか解らないし、引き裂かれるような痛みが断続的に襲い来る。
「い……っやだ……や……だ………と…やぁ……」
どれだけ拒否の言葉を吐いてみても、それは一向に受け入れられず身体をがくがくと揺さぶられる。
辛さに耐えきれず嗚咽を零し始めたヒカルは、虚ろな意識のままにずっと逸らしていた視線を
とうとう鏡へと向けてしまった。
そこには、行動とは裏腹に、愛おしくて仕方がないという優しい目をしたアキラがいた。
そして、ヒカルの『認めたくない自分自身』の姿があった。
嫌がっているはずのヒカルは、アキラの腕の中で快楽に身を委ねて喘いでいた。
アキラから与えられる感覚の全てを貪るように、浅ましく身体を揺らして。
ぼんやりと開かれた目には深い情慾の色を宿し、唇の端からは嚥下出来ない唾液が零れ落ちている。
腕は後ろにいるアキラに縋るように、彼の首に回されていた。
それこそが、ヒカルだった。


(17)
鏡に映る己の痴態に煽られ、ヒカルの身体は急激に快楽の高みへと昇る。
「あ、あ……とぉ…や……塔、矢ぁ…っ!!」
「……っ、進藤……っ」
背筋を這い上がってくる堪え難い疼きに、ヒカルは己を内側から灼くような激しい熱を吐き出した。
高みから一気に奈落に落とされたような絶頂の余韻に、ヒカルは身を固くして耐える。
しかし、アキラはそんなヒカルにお構い無しにささやかな愛撫を続けた。
それはヒカルには拷問だった。過ぎた快楽は苦痛に等しい。
更に、鏡の中でもっと、もっととねだっている己の姿がヒカルの自尊心を酷く傷付ける。
だが、それと同時に身体の中全てを攫っていきそうな激しい官能の悦びが彼の中にゆっくり湧き上がってきた。
そしてその深い悦楽は、欲情に溺れるヒカルの中に残った最後の理性をあっさりと凌駕してしまう。
「も…っと……もっと…欲しい……」
鏡に映る二人の結合部から、ヒカルは目を離せないままアキラを乞うた。
まるで何か全く違う生き物のように蠢くそれが、ヒカルの視覚を通して、全身の感覚器を更に鋭敏にする。
肌に触れる空気さえも、まるで鋭い針で突き刺すように彼の肉体を苛んだ。
精神は、快楽をそれと認識出来なくなる程の強烈な感覚に既に限界を訴えているのに、もっと本能に近いどこかでまだ足りないと渇望している自分をヒカルは自覚していた。


(18)
「……ん、む…んぅ…」
突如アキラの指がヒカルの口腔に潜り込む。
舌の上を指で弄られ、喉の奥へと指を伸ばされるとヒカルはまるで上下二つの口を同時に犯されているような感覚に陥った。
口を閉じる事は叶わない。
ヒカルは意識するでなくその紅い舌をちろちろと動かして、アキラの指を舐めた。
「進藤、見て…鏡……」
「……?」
ヒカルの顔は正面を向いていた。視界にはほぼ鏡しかない。
だが、ヒカルの目が鏡の中の自分達の姿に焦点を絞るには若干の時間を要した。
その曇りのない眼に映ったのはなんとも奇妙というか、滑稽というか、要するにおかしな光景だった。
チャイナドレスを纏った少年二人が淫らな格好で交わっている。
けれど、なまじ見目が良く、割と肉付きの薄い二人だけに下手をすると他人には少女二人にも、少年と少女の組み合わせにも見えただろう。
そしてヒカルの短いチャイナドレスの裾から己の性を主張するように屹立したそれが、空間が切り取られて映ったその面にアンバランスさを多分に含ませていた。
「……っかし……ナニ…これ……」
「ん……変だね…なん、ていうか……倒錯、的…?」
二人は動きは一切留めず、荒い息に微かな笑いを含ませながら、ゆっくりと言葉を吐いた。
鏡の向こうのアキラがヒカルを引き寄せる。
そしてその中心を手に握り大きな手の平で何度も擦り上げる。
もはやヒカルの腰は完全に能動的に動いていた。
昇り始めた熱をただひたすらに煽り立てて、快感だけを追う。
そのまま果てのない高みへと引きずられ。
ヒカルが体内に熱い迸りを受け止めると同時に、彼自身も一切を解き放ち。
限界まで張り詰められていた何かが切れた様にヒカルの意識は闇の淵へと落ちて行った。


(19)
「………あら?」
母親の素頓狂な声に、アキラは手を止めて顔を上げた。
「ねぇ、アキラさん。この紙袋のチャイナドレス、あともう二着ほどあったわよね?」
アキラの身体は不自然にビクッと揺れたが、彼の母親は背を向けていた為、気取られる
事はなかった。
アキラは一旦息を止めて深く息を吐くと、平静を装って答えた。
「進藤が来た時にふざけてて汚しちゃったから、クリーニングに出したんだ。黙ってい
てごめんなさい」
「まぁ、そうなの……」
「もしかして入り用だった?」
「すぐにというわけじゃないんだけど、市河さんに差し上げようかと思って。だって、
どうせアキラさん着てくれないんでしょう?」
「……お母さん……」
「そんな風に母親を睨むなんて。そんな子に育てた覚えはないのに……」
今にもよよ、と泣きそうなほど芝居掛かった言葉に、アキラは思わず溜め息を漏らした。
それを耳聡く聞き付けた母明子は恨みがましく言う。
「最近アキラさん冷たいわ」
「お父さんに構ってもらえば?」
「あの人がそういう人じゃないって分かってる癖に」


(20)
確かにそうだ。堅物と言うほどではないが、割と冗談の苦手なアキラの父親は母親のペー
スに始終引っ掻き回されている。妻を溺愛はしていても、生来の性格は変えられないものだ。
よって、彼女の冗談にはオロオロするばかりで彼女の望むようなテンポの良い返事はそ
うそう返って来ないのだった。
「でも、汚してしまったのをお譲りする訳にはいかないわね」
「…すみません」
項垂れて謝る息子に、母親はころころと笑った。
「いいのよ。済んでしまった事を言っても仕方がないもの。それよりアキラさん、クリー
ニングに出したの、どんなのだったか覚えてる?」
「? ピンク色のと紺色のだったよね?」
「ええ。あのピンク色の、進藤君に似合うと思わない?」
「………………………………お母さん」
「アキラさん、頭でも痛いの?」
天然なのか確信犯なのか、明子は頭を抱えたアキラを心配そうに覗き込む。
(……お母さんってほんとタチが悪い)
けれど韓国に旅行に行った際にはチマチョゴリを買って来ないかな、などと考えたアキ
ラは、自分も相当にタチが悪いという事など微塵も感じていなかった。



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