sai包囲網・中一の夏編 16 - 20


(16)
 だけど、進藤。ここには、キミを庇護してくれる者は誰もいない。
「はぁ、あぁ・・・ん」
 刺激を紛らわそうと、進藤が唯一自由になっている上半身を反らし、
何度か小さな頭を振り乱す。それに添うように、柔らかそうな明るい色
の前髪が額や頬にかかって、うっすらと滲み出る汗に張りつく。
 丸みのある頬、忙しなく息を吐く小さく柔らかい唇、涙で濡れて色を
濃くした長い睫毛。同い年のボクより幼い印象のあった進藤がまるで違
う生き物に生まれ変わってしまったように見える。
 そう。そして、ここも。口から離した進藤の性器は、初め見たときの
淡いピンクから赤く色を変え、大きく張り詰めていた。だけど、先端に
薄い膜が被さったままだった。
「進藤、自分で触ったことがないの?」
「な、何?」
「これ、だよ」
「痛っ!やっ!」
「動くなよ」
「いてっ、やだ、やだぁ」
 進藤の悲鳴を無視して、軽く力を入れて包皮を反転するように捲って
いくと、やっと頭が飛び出て来た。そのままにしておいても、再び潜っ
てしまう気配はない。
 もう一度舐めようとして、さっきまで煩いほどだった進藤の声が聞こ
えなくなったことに気がついた。ぽつりぽつりと、何かが柔らかい太股
に滴り落ちて来る。
「進藤?」
「ふっ、えっ・・・」
 見上げた進藤の目には、泉のように透明な涙が溢れ、頬や顎を濡らし、
零れていた。


(17)
 立ち上がって、目線を合わせた進藤の唇が小さく震えてる。噛み締め
たときに切ったのか、下の唇に少し血が滲んでいて、そこだけが紅を差
したように赤い。指の先で拭って、触れる間際まで顔を寄せた。
「泣かないで、進藤。ここにはボクとキミしかいないんだから、恥ずか
しがらなくても、いいよ」
 優しく髪を撫でながら、耳元で囁くと、進藤の目が縋るようにボクを
見た。そう、キミを助けてあげられるのは、ボクだけだよ。
「と、や・・・」
「何?」
「オレ・・・」
 その後を続けられず、視線を逸らす。まだ、キミの傍らにいる囲碁の
神様を庇うつもりなんだね。こんな目にあってるキミを救ってもくれな
いモノの方が大事?
「いいよ、それでも・・・」
 唯一進藤の身体を隠す役目を果たしていたTシャツを胸元までたくし
上げて、現れた小さな胸の飾りを舌先で舐める。柔らかそうなおなかの
真ん中にあるヘソも、さくらんぼのように色づき始めたここも、進藤の
パーツは全てが小振りにできてるみたいに思える。
「ん、うぅ・・・」
 触れる度にびくっびくっと震える滑らかな手触りが気持ち良かった。
「はぁ、あぁ、やぁ・・・」
 舌と指で刺激した胸の先端がくっきりと形を作る頃には、放っておい
たはずの進藤の下肢がまた反応を見せ始めていた。皮を破ってすっかり
頭を出させたそこに触れると酷く痛がる。それにかまわず、手で握り込
むようにさすりながら、先だけを口に銜えた。
「痛い!やだぁ!」


(18)
 痛い、止めろを繰り返しながらも、どんどん進藤の性器は熱くなり、
とろとろと白濁したものを零している。軽く犬歯で甘噛みすれば、涙の
混じった悲鳴が上がる。なりふりかまわなくなってきた進藤の痴態に、
ボクの下肢も痛くなって来る。男同士でやれるのかと、思っていたのが
嘘のような、ボク自身も知らなかった身体の変化だった。
「やっ、はぁん、あぁ!」
 断末魔にも似た悲鳴と一緒に、大きくソファーのスプリングが跳ね。
その余韻でがくりと力をなくした小さな身体が横に倒れた。はぁはぁと
浅く早い息を吐く進藤の細い下肢は、汗とは違う体液で濡れていた。
 あぁ、ちょうどいいな。
 脚の間を伝うものを指に絡め取って、今まで隠れていた進藤の最奥を
探ると、甲高い声と共に細い身体が捩られた。
「ひゃあぁ!?」
「進藤、変な声を出すな」
「なっ、お、お前が、そんなとこ・・・」
「そんなとこ?」
 小さく笑いながら、指を中に押し込む。一本でもかなりきつい。良く
馴らさないと、挿れるのは無理そうだな。その前に、進藤がギブアップ
してくれれば、その必要もないけれど・・・。
 段々、最初の目的と手段が入れ替わってしまってるのが、自分でも分
かった。saiに打たせるためだけじゃなく、ボクは進藤の淫らな反応
を愉しんでる。
 ボクに犯されたとき、進藤はどんなふうになるんだろう・・・。
「いやだ、塔矢、やめろ!」
「なら、そんなに、締めつけないよ」
 やっと苦労して通った二本め。腹の底から振り絞るように呻き、苦し
そうだった進藤が、ある場所に触れた途端、飼い主に甘える仔犬の鳴き
声を漏らした。


(19)
「ん、うっ・・・はぁ、あっ、ん」
「ここがいいんだ。進藤?」
「やぁ、何で・・・」
 中の締めつける力は衰えてないのに、がくりと下半身の力が抜けた分、
自然と脚が開いて、手を動かし易くなったようだ。追い上げられるよう
な吐息に合わせて、もう一本増やした指で進藤が感じるところを狙って
内壁に何度も精液を塗り込む。
「はぁ、あぁん、はっ、あぁ!」
 絶え間なく上がる甘い声。ぎちぎちと締めつける進藤のそこに、挿れ
たときの感覚を想像して耐えきれなくなりそうだ。パンツの前を開け、
片手で取り出したボクの男根は、既に何もしなくてもいいくらいに硬く
なっていた。
「塔矢、も、許して。死んじゃうよぉ」
 いつの間にか、二度めの射精をしてしまったらしい。手を後ろで縛ら
れたままの窮屈な体制で、進藤は顔だけを上げ、必死に呼吸を繰り返し
ていた。
 今なら、進藤も黙って首を縦に振るかと思ったけれど、ボクの方は我
慢ができそうになかった。もっとも、この期に及んで、止めるつもりは
なかった。
「あっ、うっ、いやぁ、あぁ!!」
 馴らしただけあって、先端は何とか通ったけど、その後が大変だった。
痛みに身体を強ばらせた進藤のせいで、なかなか奥まで辿り着けない。
「力を、抜け、進藤」
 目の前の白い双丘を軽く叩いて促してみても、できないと言わんばか
りに頭が左右に激しく振られた。


(20)
「痛い、痛い!塔矢、痛い!」
 まるで折檻をされる子供みたいに髪を振り乱す、進藤。かなりの狭さ、
きつさに、こちらまで冷や汗が出て来る。もっとも、痛みに奥歯を噛み
締めながらも、ここで止めるつもりはないけれど。
「進藤」
「ふぇ、えっ・・・」
 ぼろぼろと拭うこともできない涙が、ソファーにシミを作る。
 これじゃ、先に進めないか。
「つっ・・・」
「うわぁ!?」
 一度、抜こうと腰を引けば、熱い粘膜が絡みついて来る。思わず押し
進みそうになるのを堪えて、進藤の身体を放した。
「はぁ、あっ・・・」
 やっと解放されたと安心でもしたのか、浅く早い息を吐きながら進藤
はぐったりと身体を投げ出した。後ろ手に縛られたまま、腰だけを高く
上げた、淫靡とも言える痴態も気にならないみたいだ。
「進藤」
「あっ、何?」
 キリキリキリ。テープを切るために持って来たカッターの立てる音に、
顔を上げた進藤の視線が注がれる。歯をそちらに向けた途端、びくりと
小さな身体が竦んだ。
「な、何、するんだ?」
「別に。テープを切るだけだよ」
「あっ、そっか・・・」
 気が抜けたみたいに、がくんと進藤の薄い肩が落ちる。
「動いちゃダメだよ」



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