夏 16 - 20

(16)
　意外だった。ボクは､ポカンと口を開けたまま､彼を見つめ返した｡
「ね…どうすればいいんだよ？」
進藤は､顔を真っ赤にして､苛立ちながらと再度訊ねてきた｡それだけで､彼の退っ引きならない
情況が伝わってくる｡嬉しくて､自然と笑顔になってしまう｡

　「じゃあ､まず脱いで。」
ボクの指示に進藤は素直に従った｡彼が着ている物を一枚ずつ､床に落としていくのを横目で
見ながら､ボクもベッドの端に座り直して､ズボンの前をくつろげた｡
「ここに来て。」
進藤が､一糸纏わぬ姿でボクの前に跪く｡不安そうな面持ちで､ボクの次の言葉を待っている｡
「ボクに触れて………」
こわごわと伸ばされた彼の指先が､ボクに触れる｡本当は､それだけで､簡単に勃ってしまいそうだ｡
　進藤は､ボクがいつもしているやり方を思い出そうとしていた｡両手でボクを握り､たどたどしい
手つきでそれを擦りあげる｡……………………すごく気持ちいい………。
　「塔矢､気持ちイイ？」
ボクの反応に気をよくして､彼は手の動きを早めた｡右手で根本をキュッと握り､左手は
袋を優しく愛撫する｡
　ボクは､進藤の頭に手を伸ばした｡その柔らかい髪を撫でながら､彼の与える快感に酔っていた｡

(17)
　進藤は､一度手を止め､顔を上げてボクを見た｡やっていることは淫らなことこの上ないのに､
進藤は無邪気そのものだ｡褒めて欲しいと､瞳をキラキラ輝かせる子犬のようだ｡見えない
しっぽは､きっと高速回転しているだろう。
「すごく上手だよ……」
頭を撫でると､彼ははにかんだような笑顔を見せた。そして､今度はそこに唇をそっと寄せた｡
　信じられない｡進藤がボクのを舐めている｡それだけで､達してしまいそうだった｡先端の
口に舌を差し入れ､ぐりぐりと押す｡カリの部分から､下へ向かってそっと舌を這わせ､
袋まで舐めた｡
　コレはボクの行為をそのままなぞっているだけだが､彼の拙い口技は十分すぎるほどボクを
昂ぶらせた｡
　進藤は先端を口に含み､暫くしゃぶっていた。が､やがてそのままそれを呑み込もうとした｡
苦しげに眉を寄せ､もっと深く迎え入れようと､必死になって喉の奥へと押し込んでいく｡
「進藤……！ダメだ…ムリするな……」
ボクは､無理矢理腰を引いた｡進藤は､ ボクの膝に倒れ込み､ゲエゲエと咽せた｡
　彼の背中をゆっくりさすった。進藤は､まだ､咽せていたが､それでも顔を上げて涙の
滲んだ瞳でボクを見つめた｡
　ボクのそれはもうすっかり出来上がっていて､いつでも彼の要求に応えられる｡
「いいよ……おいで…」
ボクはあやすように､彼の繊細な線で柔らかく形取られた顎を擽った｡

(18)
　ボクは進藤を立たせて､自分の方へ引き寄せた｡彼の身体をギュッと抱きしめ､滑らかな
胸や腹に頬ずりをした｡そして､背中を這わせていた手を徐々に下げていく｡

　「はぁん……」
両手で尻を掴み､メチャクチャに揉みほぐすと、彼は背中を反らせて喘いだ｡　
　胸にあたっている彼の性器もボクと同じくらい熱くなっていた｡ボクはそれにワザと触れないで､
唇で彼の胸を､手で彼の後ろを嬲った｡
「あ………やぁ……焦らさないで……」
進藤は､身体をいやらしくくねらせて､ボクの頭を抱きしめた｡
　その腕をそっとはずして､ベッドの上に転がっているローションのビンを手に取った｡
掌にそれをとり､たっぷり濡らす｡このタイプはすぐに乾いてしまうから､手早く作業を
行わなければいけない｡本当は専用のジェルの方がいいけど､それを取りに行く時間が惜しかった｡
コレでも､ナイよりはマシだろう｡
　ボクは､進藤の後肛に濡れた指を突き立てた｡先程からの愛撫でそこは､もう柔らかく
なっていて､ボクを簡単に受け入れる｡
「アァ………」
グチュグチュと中を掻き回すと､それに合わせて進藤の腰も揺れる｡
　進藤がボクの肩に顔を押しつける｡ガクガクと震える足は､もう熱い身体を支えていられない
ようだ｡
「………意地悪……」
耳元で囁かれる甘い誘惑｡
　ボクは身体を少しずらして､進藤をベッドの上に引き上げた｡力の入らない進藤は､
すぐにクタリとへたり込んでしまう｡その身体を支えて､ボクの腰をまたぐように
なんとか膝立ちさせた｡
「…………？」
進藤は､潤んだ熱っぽい瞳を不思議そうにボクに向けた｡
「キミが自分で入れて………」

(19)
　ボクの言葉は進藤にとって､到底受け入れがたいモノのようだった｡
「………や､やだ……でき…ねえ…よ……」
イヤイヤと首を振る進藤の顎を捉えて､唇を重ねた｡
「ン………ンン……」
唇を無理矢理こじ開け､舌を侵入させた。逃げようとする彼を絡め取り､すすり上げると
微かにボクの味がしたような気がして不思議だった｡
―――――進藤もいつもそう思っているのかな？　
　名残惜しげに唇を離し､正面から進藤を見つめ直した｡進藤は両の瞳から大粒の涙を
ボロボロ零した｡
「何で､そんな意地悪言うんだよ…オレ､オマエの言う通りにしたじゃんか………！」
進藤が､泣き叫ぶように訴えた｡焦れったそうに腰を擦りつけ､今にも崩れ落ちそうな
身体をボクの首にまわした腕で支えている｡
　ボクの知っている進藤とはまるで別人のようだ。いやらしく腰を振り､憚りもなくボクが
欲しいと哀願する｡
　ゾクゾクした｡もっと泣かせたい｡もっと恥ずかしがらせたい｡それよりも､もっと自分を
欲しいと言わせたい｡
　ボクの肩に顔を埋めて､「オマエなんか､キライだ」とすすり泣く彼の耳元に熱く囁いた｡
「…………でも､欲しいんだろ？」
　進藤は弾かれたように顔を上げ､涙でグショグショになった顔を歪めた｡

(20)
　「そんな顔しないで………出来るよ…ボクが支えてあげるから､力抜いて……」
ボクは優しい声で宥めた｡正直言って､このまま引っ張るのもツライ｡進藤が欲しいのは
ボクも同じなのだ｡でも､今､優位に立っているのはボクだ｡
『今日は､ボクの好きなようにしてもいいかな？』
自分に彼をこんな風に扱うことが出来るとは思っていなかった｡今まで､彼を傷つけないように､
彼が不愉快にならないように細心の注意を払って､壊れ物のように扱ってきたのに………。
　進藤もボクも今日はヘンだ｡ヘンだけど､イヤじゃない｡むしろ嬉しい｡昼間の熱が身体の奥に､
まだ残っていたせいかもしれない｡

　ボクはもう一度彼にキスをして､「さあ」と促した｡進藤は､グスグスと鼻をすすりながら､
腰を浮かした｡右手をボクの肩にかけて､身体を支えながら､左手で後ろの秘孔を広げた｡
ボクも彼の腰に手をぐるっと回して支え､もう片方の手で自分が進藤のソコにうまくあたるように
固定した｡
　「力を入れちゃダメだよ……息を吐いて……」
進藤は出来るだけ身体の力を抜こうと､ボクの言う通りに大きく息を吐いた｡
　そのまま静かに腰を沈める｡
「あ……痛……」
苦しげに顔を顰めた進藤の動きが一瞬止まった｡
「大丈夫だよ………ゆっくり来て……」
無責任なボクの言葉に､彼は素直に頷いた｡いつも思うことだけど､進藤はこういうところが
本当に可愛いと思う｡