初めての体験 16 - 24


(16)
アキラにはそう言って出てきたものの、ヒカルの気持ちは重かった。
倉田のあの巨体では、ヒカルはつぶされてしまうのではないだろうか。
やっぱり、このまま引き返そうか。倉田の家の前まで来てまだヒカルは
迷っていた。
「進藤?」
ヒカルが悩んでいるうちに、当の本人に後ろから声をかけられた。
どうやら、買い物帰りらしく、コンビニの袋を下げていた。
「倉田さん・・・。」
改めて倉田を眺めると、やっぱり大きい。小柄なヒカルが二人いや、
三人は入りそうだ。身長も高いが、それにもまして横幅がでかい。
「何、やってんの?」
ヒカルは覚悟を決めた。
「倉田さんに一局打って貰おうと思って。」
ヒカルはにっこりと笑いかけた。

倉田はあっさりと了承し、ヒカルを家の中に招き入れた。ヒカルの予想に
反して、倉田の部屋の中は意外と奇麗に片づいていた。
「へえ、倉田さん、案外奇麗好きなんだ。頭、ぼさぼさだし、ズボンもシワだらけだから、
もっと、散らかっているかと思った。」
「ハハ。進藤ラッキーだな。昨日掃除したばっか。」
倉田は人懐こい笑顔を浮かべた。ヒカルは、倉田が嫌いではない。性格は
単純で明るく、ヒカルと似たところがあった。
座布団を碁盤の前に、敷いている倉田の背中にヒカルは抱きついた。
「進藤?」
倉田はビクともしない。もしかしたら、蚊が止まったくらいにしか、感じて
いないのかもしれない。そんな、倉田の耳元に唇を寄せて、ヒカルは囁いた。
「倉田さん・・・オレと・・・しない・・・?」


(17)
ヒカルの甘い声は、倉田の脳天を直撃した。背中がゾクッとした。首だけで
振り向くと、自分を覗き込んでいるヒカルと目があった。その瞳は妖しい色を
浮かべている。
倉田は自分の胸元にまわされているヒカルの手を掴むと、そのまま前に
引っ張った。ヒカルはバランスを崩し、倉田の前に倒れかけた。しかし、
ヒカルはまるで空気のように軽く、倉田に抱き留められた。
倉田の膝の上で、ヒカルはびっくりして目を丸くした。
「進藤。可愛いな。」
倉田が愛嬌のある笑顔で言った。そして、目を丸くしているヒカルの唇を
分厚い唇で塞いだ。倉田は、ヒカルにキスをしながら、その細い体を抱きしめた。
息苦しさにヒカルは喘いだ。倉田は、慌てて力を抜いた。
「すまん。もっと、優しくしないとな。進藤は細っこいから。」
倉田がまた笑う。ヒカルも笑った。いつもの明るい笑顔だった。
「そうだよ。もっと優しくしてよ。でないとオレつぶされちゃうよ。」
と、口をとがらせる。倉田に抱きしめられていると、不思議と安心する。
そんな自分にヒカルはとまどっていた。このどっしりとして揺るがない
体型が警戒心を薄くさせるのかもしれない。ヒカルは倉田の胸に頭をもたれ
かけさせた。
倉田の厚い指先がヒカルのシャツの中をまさぐった。乳首へと辿り着くと、
乳輪を指でなぞり、突起を押しつぶした。
「ああん」
ヒカルが声を上げた。倉田はしつこく、乳首を弄ぶ。
「や・・・やだ・・・」
倉田はヒカルのシャツを捲り上げ、ジーパンに手をかけた。ヒカルは
大人しくされるがままになっている。倉田は自分も服を脱ぐと、もう一度、
ヒカルを膝の上に座りなおさせた。
ヒカルの乳首を舌でなぶりながら、股間に手を這わせる。
「く・・・くら・・・た・・さ・・・」
「進藤。気持ちいい?」
倉田がヒカルに問いかける。ヒカルは黙って、吐息をかみ殺した。
「言わなきゃ途中でやめちゃうよ?」
ヒカル自身を弄びながら、倉田が楽しそうに言った。


(18)
「や・・・やだ・・・やめちゃ・・・」
ヒカルが泣きそうな声で倉田に訴えた。倉田は、
「うそうそ。進藤は可愛いな。」
満足そうに笑った。
倉田はヒカルが出した先走りで、ぬるぬるになった指で後ろの入り口に
触れた。
「きゃう」
ヒカルの体がビクッとはねた。そのまま、そっと指でほぐす。
「あぁ・・・あん・・・んん・・・」
ヒカルが絶え間なく声を漏らし続ける。
「進藤。いくよ。」
倉田はヒカルを軽々と持ち上げ、そのまま、自分の上に落とした。
「あぁ────────────」

「ああ・・・いい・・・くらたさん」
倉田が体を揺するたび、ヒカルのものがでっぷりとした倉田の腹にこすれる。
その快感と後ろから与えられる感覚に、ヒカルはおぼれそうになる。
何も考えられなかった。頭の中が真っ白になり、意識が途切れた。




「倉田さんに打って貰えた?」
アキラがヒカルに問いかけた。ヒカルはちょうど感想を書いているところだた。

倉田・・・次代を担う実力派。その技量は侮りがたし。

「うん。やっぱ、塔矢の言う通り、食わず嫌いはよくねーよな。
打ってもらって良かったよ。でなきゃ、倉田さんの強さはわかんなかった。」
と、ヒカルがしみじみと答えた。
「・・・?前にも、打って貰ったことあったんだろう?」
「あん時とは、状況がちがうもん。」
「・・・?よく・・・わからないけど、何か学ぶものがあったんなら良かったよ。」
アキラがヒカルの髪を梳きながら笑った。
「うん!塔矢のおかげだぜ!」
ヒカルはアキラに抱きついた。

<終>


(19)
 ヒカルは、自分のシステム手帳をじっと見つめて考えていた。名前が幾つか並んでいる。
『・・・偏っている。』と、ヒカルは思った。一人例外はいるが、それ以外は全て、若手の名前だ。もっと視野を広げなければ・・・。強くなるためには、選り好みをしていてはだめだということは、倉田で勉強済みだ。
 手始めに、よく知っているあの人からにしようか。

 院生が帰った後の棋院の大広間、篠田も帰ろうと腰を上ようとしたとき、入り口に人影が見えた。首だけだして、こっちを覗き込んでいる。篠田はその顔をよく知っていた。
 「進藤君。どうしたんだね?」
今日は日曜日。プロであるヒカルの手合いの日ではない。ヒカルは訝しんでいる篠田の顔を照れくさそうに見た。
「篠田先生・・・。オレ、先生にお礼を言おうと思って。」
「お礼?何のことだね?」
ヒカルは続けて言った。
「オレがプロになれたのは先生のご指導のおかげです。」
「いや、それは進藤君が、がんばったからだよ。」
篠田はヒカルの言葉を嬉しく思った。眼鏡の奥から優しい目を細めてヒカルを見た。
院生師範の篠田はやんちゃで明るいヒカルを目にかけていた。ヒカルは篠田の前に正座した。
そして、
「先生のおかげです。本当にありがとうございます。」
と、言ってヒカルは篠田の手を両手で握った。

 「し・・・進藤君!?」
篠田は狼狽えた。ヒカルが篠田の掌を指でくすぐったり、撫でたりしたのだ。
そんな篠田にヒカルは顔を近づけて言った。篠田の知っているヒカルではなかった。
「せんせい・・・お礼がしたいんです・・・」
ヒカルの唇が妖しく動く。ヒカルの瞳に囚われたように、篠田は動けなくなった。


(20)
 両肘で体を支えている体勢の篠田にのしかかる。そして、篠田の眼鏡を外して、あえいでいるその唇に深く口づける。ヒカルの舌が篠田の中に差し込まれた。
ヒカルは篠田の上顎を舐めたり、舌を吸ったりした。ヒカルの舌と唇が篠田の口の中を愛撫し続けた。
 ヒカルの指がネクタイをはずし、シャツのボタンを一つずつはずしていく。
アンダーシャツをズボンから引き出して、そのまま、まくり上げた。
「先生・・・オレの次の手わかる?」
ヒカルがクスクスと笑いながら言った。ヒカルの舌が篠田の首筋を舐め、鎖骨へと滑っていき、それから乳首を舐めた。篠田の体がふるえた。
 「し・・・進藤・・・やめなさい・・・」
篠田が呻いた。ヒカルの手が篠田の股間へと伸びた。
 「先生・・・やめて欲しくないんでしょ?そうだよね?」
ヒカルが篠田のズボンのファスナーをおろして、中身を取り出した。
それはもう立ち上がり始めていた。
 篠田は必死で誘惑と闘った。ヒカルが与える快感に耐えようとした。
院生は篠田にとって、自分の子供も同然だ。いくら何でもこんなこと・・・!!
 ヒカルは、篠田をさすっていたが、なかなか思うようにならない篠田に焦れた。
 「先生・・・。オレのこと嫌い?」
ヒカルが潤んだ瞳で篠田を見つめた。涙をにじませ、声には悲しみを含んでいた。
その目を見た瞬間、篠田は陥落した。ほんの少し残っていた理性を完全に手放してしまった。
 ヒカルは満足げに笑って、固まったままの篠田から、一旦離れた。そして、服を全部脱ぎ捨てて、鞄の中から、何か液体の入った小さな瓶をとりだした。
ヒカルは小瓶を傾けて、中の液体を手に塗った。
 ヒカルは、篠田に見えるように大きく足を広げると、指を後ろの入り口に差し込んだ。
「ああぁん」
ヒカルは自分が与える刺激に耐えかねて、あえいだ。指を一本ずつ増やしていく。
「あ・・・あん・・・ンン・・・ああん」
指が出入を繰り返す、そのたびにいやらしい音がした。後ろをなぶりながら、自分で乳首を弄ぶ。口を半開きにして、赤い舌で唇を何度も舐めた。
唾液が口の端から喉元へと伝った。
 そんなヒカルの嬌態に篠田は完全に堅くそそり立っていた。


(21)
 ヒカルが篠田に跨った。
「・・・し・・・ん・・・ど・・・く・・・ん・・・」
 篠田はヒカルを苦しげに見つめた。
 ヒカルは篠田に笑いかけて囁いた。
「先生・・・すぐ・・・すぐに気持ちよくしてあげるから・・・ね・・・」
そして、篠田自身を持って位置を確かめると、そのまま腰を沈めた。
「うん・・・あぁ!せん・・・せ・・・どう・・・?」
 ヒカルが動くたびに、今まで経験したことがないような快感が押し寄せてくる。
「せんせ・・・いぃ・・・ああ・・・ん・・・くふ・・・」
篠田の頭の中は真っ白になった。
 
 
 
 「あれ?進藤。この篠田先生って誰?」
ヒカルのシステム手帳をめくりながらアキラが訊ねた。
「ああ。塔矢は知らないんだ?棋院の院生師範。」
「ああ・・・。それでいつもと違うページに書いてあるんだ。」
「さすがだよ。一筋縄じゃいかねーんだぜ。でも、おかげで新しい手を
 思いついたけどね。」

 篠田先生・・・指導力はピカイチ!現役時代に対局したかった。・・・おしい。

 ヒカルはクスクスと思い出し笑いをした。日曜日のことを思い出したのだ。
そんなヒカルを見て、アキラは複雑だった。ヒカルが楽しそうに、院生時代を思い出しているように見えたからだ。
 アキラは、院生時代のヒカルをよく知らなかった。ヒカルと思い出を共有できないことを悲しく思い、ぽつりと呟いた。
「ボクも院生だったら・・・進藤と一緒に指導してもらっていたのかな?」
「かもな。そしたらもっと早く塔矢と・・・」
 ヒカルは上目遣いにアキラを見つめて言った。そして、自分の指をアキラの指に絡ませて、アキラの唇にチュッと軽くキスをした。
 そのあまりの可愛らしさに、アキラはたまらずヒカルを押し倒した。

<終>


(22)
 「せっかく訪ねてくれたのにすまないな。今日はアキラは出かけているのだよ。」
と、アキラの父・塔矢行洋は言った。もちろん、ヒカルはそのことを知っていた。
が、それを口に出す必要はない。そして、表面上は、いかにも残念そうに言った。
「そうですか・・・。残念です。」
ヒカルのそんな顔を見て、塔矢行洋は、
「まあ、せっかく来たんだし一局打っていきなさい。」
と、言った。ヒカルの顔がパッと明るくなった。
「はい。是非、おねがいします。」
ヒカルは笑顔で言った。行洋は苦笑しながら、言った。
「今日はあいにく、妻も出かけているのでお茶もだせないが・・・。」
「気を使わないでください。」
と、ヒカルは殊勝に答えたが、実際はそのことも、チェック済みであった。

 行洋が、ヒカルの打った手を一つずつ解説していく。ヒカルは行洋の指先を見つめながら、
真剣に耳を傾けた。
 碁笥を碁盤の上に置き、ヒカルは改めて、行洋の横に座り直して、頭を下げた。
「先生、今日は本当にありがとうございました。」
「いや、かまわないよ。また、いつでも来なさい。」
と、行洋は笑顔で答えた。行洋はヒカルに好意をいだいていた。囲碁の腕もさることながら、
明るくて、人懐っこい少年。そして、アキラの親友でもある。同じ年頃の友人のいない息子の
唯一無二ともいえる存在の少年である。気に入らないわけがなかった。
 そのお気に入りの少年が行洋を恥ずかしそうに見つめて言った。
「先生。こんなこと言ったら怒るかもしれないけど・・・。ホントはオレ、もし、
先生に勝てたら・・・先生に頼みたいことがあったんです・・・。」
「何だね?言ってみなさい。できることならかまわないよ。」
行洋は笑みを浮かべた。息子のアキラは周りに大人が多いせいか、大人びた少年だった。
ヒカルはまるで正反対、実際の年齢よりずっと幼く見えた。行洋は、この少年の頼みを聞いて
あげたくなったのだ。
「ホント?ありがとうございます!」
ヒカルは、行洋にいきなり抱きついた。


(23)
 「し、進藤君!?」
行洋が狼狽えた。ヒカルが耳元で囁いた。
「先生・・・いいでしょ?」
ヒカルが行洋の耳をかんだ。舌を耳に差し入れ、手を着物の襟元へ滑らした。
と、その手を行洋が捻り上げた。ヒカルはその痛さに顔をしかめた。行洋がヒカルの目を
見据えて静かに言った。
「大人をからかうとは悪い子だ。だが・・・これは君が仕掛けたことだからな。」
言うが早いか、ヒカルはそのまま畳の上に引き倒された。そのまま、手荒く服を
はぎ取られていく。シャツをまくり上げ、ジーパンを引きずりおろされた。
ヒカルは驚きのあまり、固まってしまった。今までは、動けなくなるのは相手の方だった。
ヒカルが潤んだ瞳で見つめ、甘い声で囁くと、大概の男は抵抗をやめ、ヒカルに屈した。
それなのに・・・!
 ヒカルは初めて、男を怖いと思った。全裸で転がされたヒカルに、行洋がゆっくりと
かぶさってきた。ヒカルは逃げようとした。が、全身でのしかかられて身動きがとれなかった。
「どうして逃げるんだ?君が望んだことだろう?」
「やだ!先生・・・ごめんなさい!・・・!」
行洋がヒカルの唇を荒々しく塞いだ。顎を強く掴み、無理矢理、口を開かせた。舌でヒカルの
口腔内を蹂躙した。顎が痛い。怖い。ヒカルの目から涙が流れた。
 こんな行洋を見たのは初めてだった。いつも穏やかでおよそ激高したことがない。
だが、行洋はアキラの父親なのだ。あのアキラの・・・。ヒカルは行洋を甘く見すぎていたことを
心底後悔した。
 泣いているヒカルを一瞥して、行洋は薄く笑った。このあたりで許してやろうか。
そうして、改めてヒカルの全身を眺めた。細い肩、それに続くなだらかな曲線、華奢な手足、
小麦色の肌。昨日つけられた痣が全身に点在している。その姿は行洋を煽った。
 「と・・・や・・・せん・・・せ?」
ヒカルが恐る恐る訊ねた。行洋は無言で、再びヒカルを押さえつけた。


(24)
 行洋の手がヒカルの体を荒々しくまさぐった。その乱暴なやり方にヒカルは喘いだ。
ヒカルは涙を流しながら、行洋に謝り続けた。
「ごめ・・・なさ・・・せん・・・せ・・・ごめ・・・」
その泣き声が行洋をますます煽る。
 行洋は自分が冷静さを失っているのを自覚していた。ヒカルの喉元に強く吸い付き、
徐々に下に移動する。行洋がヒカルの痣を辿った。アキラがつけた痣を・・・。
乳首を口に含み、舐めあげる。両の乳首を交互になぶり、弄ぶ。
「ああ!先生、やだ!」
ヒカルが身悶えた。行洋は、かまわず、そのまま続けた。涙があふれてきた。
ヒカルは歯を食いしばって耐えた。その口をこじ開けて、行洋は自分の指をつっこんだ。そうして、低い声でヒカルに命じた。
「舐めなさい。」
ヒカルは怯えながら、懸命にその指を舐めた。もう、逆らうことはできなかった。行洋の指が、ヒカルの唾液でぬらぬらと光った。
 行洋はヒカルを犬のように、四つん這いにさせた。そして、後ろに、十分に
湿らせた指を一本ずつ入れた。ヒカルの体が小刻みにふるえた。

「せん・・せい・・・ゆる・・して・・ごめ・・」
ヒカルの耳に衣擦れの音が聞こえた。堅い物があたった。ヒカルは必死で
許しを請い続けた。涙が畳の上にぽたぽたと落ちた。
 だが、行洋はヒカルの腰を強く掴むと、無情にもそのまま突き入れた。
「───────────────!!」
ヒカルが細い悲鳴を上げた。



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