初めての体験 16 - 28


(16)
アキラにはそう言って出てきたものの、ヒカルの気持ちは重かった。
倉田のあの巨体では、ヒカルはつぶされてしまうのではないだろうか。
やっぱり、このまま引き返そうか。倉田の家の前まで来てまだヒカルは
迷っていた。
「進藤?」
ヒカルが悩んでいるうちに、当の本人に後ろから声をかけられた。
どうやら、買い物帰りらしく、コンビニの袋を下げていた。
「倉田さん・・・。」
改めて倉田を眺めると、やっぱり大きい。小柄なヒカルが二人いや、
三人は入りそうだ。身長も高いが、それにもまして横幅がでかい。
「何、やってんの?」
ヒカルは覚悟を決めた。
「倉田さんに一局打って貰おうと思って。」
ヒカルはにっこりと笑いかけた。

倉田はあっさりと了承し、ヒカルを家の中に招き入れた。ヒカルの予想に
反して、倉田の部屋の中は意外と奇麗に片づいていた。
「へえ、倉田さん、案外奇麗好きなんだ。頭、ぼさぼさだし、ズボンもシワだらけだから、
もっと、散らかっているかと思った。」
「ハハ。進藤ラッキーだな。昨日掃除したばっか。」
倉田は人懐こい笑顔を浮かべた。ヒカルは、倉田が嫌いではない。性格は
単純で明るく、ヒカルと似たところがあった。
座布団を碁盤の前に、敷いている倉田の背中にヒカルは抱きついた。
「進藤?」
倉田はビクともしない。もしかしたら、蚊が止まったくらいにしか、感じて
いないのかもしれない。そんな、倉田の耳元に唇を寄せて、ヒカルは囁いた。
「倉田さん・・・オレと・・・しない・・・?」


(17)
ヒカルの甘い声は、倉田の脳天を直撃した。背中がゾクッとした。首だけで
振り向くと、自分を覗き込んでいるヒカルと目があった。その瞳は妖しい色を
浮かべている。
倉田は自分の胸元にまわされているヒカルの手を掴むと、そのまま前に
引っ張った。ヒカルはバランスを崩し、倉田の前に倒れかけた。しかし、
ヒカルはまるで空気のように軽く、倉田に抱き留められた。
倉田の膝の上で、ヒカルはびっくりして目を丸くした。
「進藤。可愛いな。」
倉田が愛嬌のある笑顔で言った。そして、目を丸くしているヒカルの唇を
分厚い唇で塞いだ。倉田は、ヒカルにキスをしながら、その細い体を抱きしめた。
息苦しさにヒカルは喘いだ。倉田は、慌てて力を抜いた。
「すまん。もっと、優しくしないとな。進藤は細っこいから。」
倉田がまた笑う。ヒカルも笑った。いつもの明るい笑顔だった。
「そうだよ。もっと優しくしてよ。でないとオレつぶされちゃうよ。」
と、口をとがらせる。倉田に抱きしめられていると、不思議と安心する。
そんな自分にヒカルはとまどっていた。このどっしりとして揺るがない
体型が警戒心を薄くさせるのかもしれない。ヒカルは倉田の胸に頭をもたれ
かけさせた。
倉田の厚い指先がヒカルのシャツの中をまさぐった。乳首へと辿り着くと、
乳輪を指でなぞり、突起を押しつぶした。
「ああん」
ヒカルが声を上げた。倉田はしつこく、乳首を弄ぶ。
「や・・・やだ・・・」
倉田はヒカルのシャツを捲り上げ、ジーパンに手をかけた。ヒカルは
大人しくされるがままになっている。倉田は自分も服を脱ぐと、もう一度、
ヒカルを膝の上に座りなおさせた。
ヒカルの乳首を舌でなぶりながら、股間に手を這わせる。
「く・・・くら・・・た・・さ・・・」
「進藤。気持ちいい?」
倉田がヒカルに問いかける。ヒカルは黙って、吐息をかみ殺した。
「言わなきゃ途中でやめちゃうよ?」
ヒカル自身を弄びながら、倉田が楽しそうに言った。


(18)
「や・・・やだ・・・やめちゃ・・・」
ヒカルが泣きそうな声で倉田に訴えた。倉田は、
「うそうそ。進藤は可愛いな。」
満足そうに笑った。
倉田はヒカルが出した先走りで、ぬるぬるになった指で後ろの入り口に
触れた。
「きゃう」
ヒカルの体がビクッとはねた。そのまま、そっと指でほぐす。
「あぁ・・・あん・・・んん・・・」
ヒカルが絶え間なく声を漏らし続ける。
「進藤。いくよ。」
倉田はヒカルを軽々と持ち上げ、そのまま、自分の上に落とした。
「あぁ────────────」

「ああ・・・いい・・・くらたさん」
倉田が体を揺するたび、ヒカルのものがでっぷりとした倉田の腹にこすれる。
その快感と後ろから与えられる感覚に、ヒカルはおぼれそうになる。
何も考えられなかった。頭の中が真っ白になり、意識が途切れた。




「倉田さんに打って貰えた?」
アキラがヒカルに問いかけた。ヒカルはちょうど感想を書いているところだた。

倉田・・・次代を担う実力派。その技量は侮りがたし。

「うん。やっぱ、塔矢の言う通り、食わず嫌いはよくねーよな。
打ってもらって良かったよ。でなきゃ、倉田さんの強さはわかんなかった。」
と、ヒカルがしみじみと答えた。
「・・・?前にも、打って貰ったことあったんだろう?」
「あん時とは、状況がちがうもん。」
「・・・?よく・・・わからないけど、何か学ぶものがあったんなら良かったよ。」
アキラがヒカルの髪を梳きながら笑った。
「うん!塔矢のおかげだぜ!」
ヒカルはアキラに抱きついた。

<終>


(19)
 ヒカルは、自分のシステム手帳をじっと見つめて考えていた。名前が幾つか並んでいる。
『・・・偏っている。』と、ヒカルは思った。一人例外はいるが、それ以外は全て、若手の名前だ。もっと視野を広げなければ・・・。強くなるためには、選り好みをしていてはだめだということは、倉田で勉強済みだ。
 手始めに、よく知っているあの人からにしようか。

 院生が帰った後の棋院の大広間、篠田も帰ろうと腰を上ようとしたとき、入り口に人影が見えた。首だけだして、こっちを覗き込んでいる。篠田はその顔をよく知っていた。
 「進藤君。どうしたんだね?」
今日は日曜日。プロであるヒカルの手合いの日ではない。ヒカルは訝しんでいる篠田の顔を照れくさそうに見た。
「篠田先生・・・。オレ、先生にお礼を言おうと思って。」
「お礼?何のことだね?」
ヒカルは続けて言った。
「オレがプロになれたのは先生のご指導のおかげです。」
「いや、それは進藤君が、がんばったからだよ。」
篠田はヒカルの言葉を嬉しく思った。眼鏡の奥から優しい目を細めてヒカルを見た。
院生師範の篠田はやんちゃで明るいヒカルを目にかけていた。ヒカルは篠田の前に正座した。
そして、
「先生のおかげです。本当にありがとうございます。」
と、言ってヒカルは篠田の手を両手で握った。

 「し・・・進藤君!?」
篠田は狼狽えた。ヒカルが篠田の掌を指でくすぐったり、撫でたりしたのだ。
そんな篠田にヒカルは顔を近づけて言った。篠田の知っているヒカルではなかった。
「せんせい・・・お礼がしたいんです・・・」
ヒカルの唇が妖しく動く。ヒカルの瞳に囚われたように、篠田は動けなくなった。


(20)
 両肘で体を支えている体勢の篠田にのしかかる。そして、篠田の眼鏡を外して、あえいでいるその唇に深く口づける。ヒカルの舌が篠田の中に差し込まれた。
ヒカルは篠田の上顎を舐めたり、舌を吸ったりした。ヒカルの舌と唇が篠田の口の中を愛撫し続けた。
 ヒカルの指がネクタイをはずし、シャツのボタンを一つずつはずしていく。
アンダーシャツをズボンから引き出して、そのまま、まくり上げた。
「先生・・・オレの次の手わかる?」
ヒカルがクスクスと笑いながら言った。ヒカルの舌が篠田の首筋を舐め、鎖骨へと滑っていき、それから乳首を舐めた。篠田の体がふるえた。
 「し・・・進藤・・・やめなさい・・・」
篠田が呻いた。ヒカルの手が篠田の股間へと伸びた。
 「先生・・・やめて欲しくないんでしょ?そうだよね?」
ヒカルが篠田のズボンのファスナーをおろして、中身を取り出した。
それはもう立ち上がり始めていた。
 篠田は必死で誘惑と闘った。ヒカルが与える快感に耐えようとした。
院生は篠田にとって、自分の子供も同然だ。いくら何でもこんなこと・・・!!
 ヒカルは、篠田をさすっていたが、なかなか思うようにならない篠田に焦れた。
 「先生・・・。オレのこと嫌い?」
ヒカルが潤んだ瞳で篠田を見つめた。涙をにじませ、声には悲しみを含んでいた。
その目を見た瞬間、篠田は陥落した。ほんの少し残っていた理性を完全に手放してしまった。
 ヒカルは満足げに笑って、固まったままの篠田から、一旦離れた。そして、服を全部脱ぎ捨てて、鞄の中から、何か液体の入った小さな瓶をとりだした。
ヒカルは小瓶を傾けて、中の液体を手に塗った。
 ヒカルは、篠田に見えるように大きく足を広げると、指を後ろの入り口に差し込んだ。
「ああぁん」
ヒカルは自分が与える刺激に耐えかねて、あえいだ。指を一本ずつ増やしていく。
「あ・・・あん・・・ンン・・・ああん」
指が出入を繰り返す、そのたびにいやらしい音がした。後ろをなぶりながら、自分で乳首を弄ぶ。口を半開きにして、赤い舌で唇を何度も舐めた。
唾液が口の端から喉元へと伝った。
 そんなヒカルの嬌態に篠田は完全に堅くそそり立っていた。


(21)
 ヒカルが篠田に跨った。
「・・・し・・・ん・・・ど・・・く・・・ん・・・」
 篠田はヒカルを苦しげに見つめた。
 ヒカルは篠田に笑いかけて囁いた。
「先生・・・すぐ・・・すぐに気持ちよくしてあげるから・・・ね・・・」
そして、篠田自身を持って位置を確かめると、そのまま腰を沈めた。
「うん・・・あぁ!せん・・・せ・・・どう・・・?」
 ヒカルが動くたびに、今まで経験したことがないような快感が押し寄せてくる。
「せんせ・・・いぃ・・・ああ・・・ん・・・くふ・・・」
篠田の頭の中は真っ白になった。
 
 
 
 「あれ?進藤。この篠田先生って誰?」
ヒカルのシステム手帳をめくりながらアキラが訊ねた。
「ああ。塔矢は知らないんだ?棋院の院生師範。」
「ああ・・・。それでいつもと違うページに書いてあるんだ。」
「さすがだよ。一筋縄じゃいかねーんだぜ。でも、おかげで新しい手を
 思いついたけどね。」

 篠田先生・・・指導力はピカイチ!現役時代に対局したかった。・・・おしい。

 ヒカルはクスクスと思い出し笑いをした。日曜日のことを思い出したのだ。
そんなヒカルを見て、アキラは複雑だった。ヒカルが楽しそうに、院生時代を思い出しているように見えたからだ。
 アキラは、院生時代のヒカルをよく知らなかった。ヒカルと思い出を共有できないことを悲しく思い、ぽつりと呟いた。
「ボクも院生だったら・・・進藤と一緒に指導してもらっていたのかな?」
「かもな。そしたらもっと早く塔矢と・・・」
 ヒカルは上目遣いにアキラを見つめて言った。そして、自分の指をアキラの指に絡ませて、アキラの唇にチュッと軽くキスをした。
 そのあまりの可愛らしさに、アキラはたまらずヒカルを押し倒した。

<終>


(22)
 「せっかく訪ねてくれたのにすまないな。今日はアキラは出かけているのだよ。」
と、アキラの父・塔矢行洋は言った。もちろん、ヒカルはそのことを知っていた。
が、それを口に出す必要はない。そして、表面上は、いかにも残念そうに言った。
「そうですか・・・。残念です。」
ヒカルのそんな顔を見て、塔矢行洋は、
「まあ、せっかく来たんだし一局打っていきなさい。」
と、言った。ヒカルの顔がパッと明るくなった。
「はい。是非、おねがいします。」
ヒカルは笑顔で言った。行洋は苦笑しながら、言った。
「今日はあいにく、妻も出かけているのでお茶もだせないが・・・。」
「気を使わないでください。」
と、ヒカルは殊勝に答えたが、実際はそのことも、チェック済みであった。

 行洋が、ヒカルの打った手を一つずつ解説していく。ヒカルは行洋の指先を見つめながら、
真剣に耳を傾けた。
 碁笥を碁盤の上に置き、ヒカルは改めて、行洋の横に座り直して、頭を下げた。
「先生、今日は本当にありがとうございました。」
「いや、かまわないよ。また、いつでも来なさい。」
と、行洋は笑顔で答えた。行洋はヒカルに好意をいだいていた。囲碁の腕もさることながら、
明るくて、人懐っこい少年。そして、アキラの親友でもある。同じ年頃の友人のいない息子の
唯一無二ともいえる存在の少年である。気に入らないわけがなかった。
 そのお気に入りの少年が行洋を恥ずかしそうに見つめて言った。
「先生。こんなこと言ったら怒るかもしれないけど・・・。ホントはオレ、もし、
先生に勝てたら・・・先生に頼みたいことがあったんです・・・。」
「何だね?言ってみなさい。できることならかまわないよ。」
行洋は笑みを浮かべた。息子のアキラは周りに大人が多いせいか、大人びた少年だった。
ヒカルはまるで正反対、実際の年齢よりずっと幼く見えた。行洋は、この少年の頼みを聞いて
あげたくなったのだ。
「ホント?ありがとうございます!」
ヒカルは、行洋にいきなり抱きついた。


(23)
 「し、進藤君!?」
行洋が狼狽えた。ヒカルが耳元で囁いた。
「先生・・・いいでしょ?」
ヒカルが行洋の耳をかんだ。舌を耳に差し入れ、手を着物の襟元へ滑らした。
と、その手を行洋が捻り上げた。ヒカルはその痛さに顔をしかめた。行洋がヒカルの目を
見据えて静かに言った。
「大人をからかうとは悪い子だ。だが・・・これは君が仕掛けたことだからな。」
言うが早いか、ヒカルはそのまま畳の上に引き倒された。そのまま、手荒く服を
はぎ取られていく。シャツをまくり上げ、ジーパンを引きずりおろされた。
ヒカルは驚きのあまり、固まってしまった。今までは、動けなくなるのは相手の方だった。
ヒカルが潤んだ瞳で見つめ、甘い声で囁くと、大概の男は抵抗をやめ、ヒカルに屈した。
それなのに・・・!
 ヒカルは初めて、男を怖いと思った。全裸で転がされたヒカルに、行洋がゆっくりと
かぶさってきた。ヒカルは逃げようとした。が、全身でのしかかられて身動きがとれなかった。
「どうして逃げるんだ?君が望んだことだろう?」
「やだ!先生・・・ごめんなさい!・・・!」
行洋がヒカルの唇を荒々しく塞いだ。顎を強く掴み、無理矢理、口を開かせた。舌でヒカルの
口腔内を蹂躙した。顎が痛い。怖い。ヒカルの目から涙が流れた。
 こんな行洋を見たのは初めてだった。いつも穏やかでおよそ激高したことがない。
だが、行洋はアキラの父親なのだ。あのアキラの・・・。ヒカルは行洋を甘く見すぎていたことを
心底後悔した。
 泣いているヒカルを一瞥して、行洋は薄く笑った。このあたりで許してやろうか。
そうして、改めてヒカルの全身を眺めた。細い肩、それに続くなだらかな曲線、華奢な手足、
小麦色の肌。昨日つけられた痣が全身に点在している。その姿は行洋を煽った。
 「と・・・や・・・せん・・・せ?」
ヒカルが恐る恐る訊ねた。行洋は無言で、再びヒカルを押さえつけた。


(24)
 行洋の手がヒカルの体を荒々しくまさぐった。その乱暴なやり方にヒカルは喘いだ。
ヒカルは涙を流しながら、行洋に謝り続けた。
「ごめ・・・なさ・・・せん・・・せ・・・ごめ・・・」
その泣き声が行洋をますます煽る。
 行洋は自分が冷静さを失っているのを自覚していた。ヒカルの喉元に強く吸い付き、
徐々に下に移動する。行洋がヒカルの痣を辿った。アキラがつけた痣を・・・。
乳首を口に含み、舐めあげる。両の乳首を交互になぶり、弄ぶ。
「ああ!先生、やだ!」
ヒカルが身悶えた。行洋は、かまわず、そのまま続けた。涙があふれてきた。
ヒカルは歯を食いしばって耐えた。その口をこじ開けて、行洋は自分の指をつっこんだ。そうして、低い声でヒカルに命じた。
「舐めなさい。」
ヒカルは怯えながら、懸命にその指を舐めた。もう、逆らうことはできなかった。行洋の指が、ヒカルの唾液でぬらぬらと光った。
 行洋はヒカルを犬のように、四つん這いにさせた。そして、後ろに、十分に
湿らせた指を一本ずつ入れた。ヒカルの体が小刻みにふるえた。

「せん・・せい・・・ゆる・・して・・ごめ・・」
ヒカルの耳に衣擦れの音が聞こえた。堅い物があたった。ヒカルは必死で
許しを請い続けた。涙が畳の上にぽたぽたと落ちた。
 だが、行洋はヒカルの腰を強く掴むと、無情にもそのまま突き入れた。
「───────────────!!」
ヒカルが細い悲鳴を上げた。


(25)
 行洋に揺さぶられている間も、ヒカルは泣きながら「ごめんなさい」を
繰り返した。そんな、ヒカルの怯える様がますます行洋を残酷にした。
泣きながら、ヒカルが達した時、体の中に熱いものを感じた。
 
 行洋が衣服を整えてくれている間も、ヒカルは俯いて、泣きじゃくっていた。
行洋は後悔した。いくら何でもやりすぎたのではないか?・・・と。
最初は軽くお仕置きをするだけのつもりだったのだが・・・。
どうして、ここまでムキになってしまったのだろうか・・・。
 行洋は、ヒックヒックとしゃくり上げているヒカルの背中を優しくさすった。
「すまなかったね・・・。でも、大人を甘く見ると怖い目に遭うってわかったろう。
 もう、二度とこんなまねをしてはいけないよ。」
いつもの穏やかな物言いに、ヒカルはコクンと頷いた。幼い子供のような仕草だった。
 「いい子だ。」
行洋が、愛おしむようにヒカルの頭を撫でた。俯いたヒカルの口元に、
小さな笑みが浮かんでいることには気づかなかった。




 塔矢先生・・・さすが現代の棋聖。引退したとはいえ、未だ王者の貫禄。

 ヒカルがシステム手帳に書き加えたとき、ちょうどアキラが来た。いつもの
碁会所で待ち合わせをしていたのだ。アキラが息を切らせて、ヒカルに言った。
「進藤。昨日はごめん。急に取材が入ってしまって。」
「仕事ならしょうがねぇよ。気にすんなって。」
と、ヒカルがにっこり笑ってアキラに言った。そして、アキラをじっと見つめた。
 「な、何?進藤、急にじっと見つめたりして。」
アキラは赤くなって狼狽えた。ヒカルは大きな目でアキラを見つめながら
「塔矢って、塔矢先生によく似てんなぁ。」
と、感心するように言った。
「え?そうかな?ボクはお母さん似だって、よく言われるけど・・・。」
アキラは面食らって、まじまじとヒカルを見返した。『全く・・・進藤は
唐突だな』と思った。
「外見の話しじゃねぇよ。性格の話し。碁の打ち方とか・・・さ。」
ヒカルはうっとりとアキラを見つめ続ける。
「だとしたら、嬉しいな。ボクはお父さんが目標なんだ。」
アキラが微笑んだ。
「きっと塔矢先生みたいになるよ。楽しみだな。ホント!」
ヒカルは心底嬉しそうに言った。

<終>


(26)
 ヒカルは壇上にあがる門脇を見た。ヒカルは彼を知っていた。院生だった頃、
門脇に頼まれて、対局したことがあった。そこそこ強い相手だと思って、佐為に打たせたのだ。
だが、ヒカルの予想に反して、門脇はかなり強かった。もし、佐為ではなく、自分が
打っていたら、果たして勝てたかどうか。いや、きっと、負けていたであろう。
ヒカルは、門脇が元学生三冠であったとは、知らなかった。
「プロになるくらい強かったんだ・・・。」
通りすがりに打っただけの相手に、ヒカルは興味を持った。

 「おじさん!」

 「おじさんだとぉ?」
いきなり背後から声をかけられ、門脇が顔を引きつらせながら、振り返った。
目の前に小柄な少年が立っていた。大きな瞳をくりくりさせて、門脇を笑って見ていた。
「おじさん・・・門脇さん、おめでとう。」
「あ・・・ありがとう。」
門脇は少し、狼狽えた。一年前、この目の前の少年に、こてんぱんにやられた
時のことは、今も鮮やかに記憶に残っている。
その時、自分がいかに甘かったのか思い知った。一念発起し、一から勉強を
やり直した。
「門脇さん、プロになったんだ。道理で強いと思った。」
ヒカルが、無邪気にニコニコと笑った。
「うん・・・。お前・・・君もね。」
門脇は照れながら答えた。去年、新聞でヒカルがプロ試験に合格しているのを見た。
そんな相手を肩慣らしに使おうとしていたとは・・・。と、苦笑した。

 しばらく、たわいない世間話をして、少し打ち解けた頃、ヒカルが、門脇に切り出した。
「門脇さん・・・オレ、前に門脇さんのお願いきいてあげたよね?」
「うん?そうだったな。」
「今度はオレの頼みきいてくれないかな?」
門脇はおいおいと思った。普通、こういう場合は逆じゃないのか?合格祝いに
オレの頼みをきいてくれるものだろう。だが、実際ヒカルに頼みをきいて
貰ったのは事実だし・・・。ムキになるのも大人げない。
「だめ?」
ヒカルが、上目遣いで見つめてくる。吸い込まれそうな瞳だった。
門脇は、思わず頷いてしまった。


(27)
 「で・・・頼みって何?」
ヒカルは、棋院の対局室に門脇を連れていった。
「人にきかれちゃまずいことなのかい?」
「門脇さん・・・オレと・・・してくれないかな?」
ヒカルが門脇を恥ずかしそうに見た。
「へ・・・?」
門脇は、ヒカルが何を言ったのか一瞬わからなかった。間抜け面で聞き返した。そんな門脇の鼻先へヒカルがチュッとキスをした。はにかんで、
ニコッと笑う姿が恐ろしく可愛かった。
 『これは・・・合格祝いってことかな?』門脇はヒカルを抱き込んだ。

 門脇がヒカルのジャケットを脱がせ、ネクタイに手をかけた。「あっ」と
ヒカルが呟いた。
「何?」
「門脇さん・・・オレ、ネクタイ結べない・・・」
門脇は吹き出しそうになった。こんな場面でネクタイの心配をするなんて・・・。
クックッと笑いながら、ヒカルのネクタイをほどいた。
「オレが結んでやるよ。」
 ヒカルを畳の上に横たえさせると、門脇はヒカルのYシャツのボタンをはずした。
前を開くと、可愛らしく色づいた乳首が現れた。門脇の喉がなる。逸る気持ちを
押さえ、門脇はヒカルの服を一つずつ剥いでいった。Yシャツ一枚残して、
全部脱がした。そのシャツも腕のあたりまで、ずらされている。門脇は
ヒカルをまじまじと改めて見つめ直した。
 「あんまり見ないでよ・・・」
ヒカルが恥ずかしそうに言った。自分の体を隠すように横向きになっている。
中途半端にシャツをまとった状態は、かえって門脇の目に扇情的に映った。
門脇は、ヒカルを再び仰向けに直すと、そのままゆっくりと覆い被さった。


(28)
 門脇はヒカルにキスをした。舌を差し入れて、絡ませる。そうしながら、
手では胸元をまさぐった。
「あ・・・あん・・・んん」
ヒカルのあえぎ声が、門脇の口に吸い込まれた。
 門脇の指が、ヒカルの乳首をいじるたび、ヒカルの体がビクッとふるえた。
「や・・・やぁだ・・・」
ヒカルが体を仰け反らせた。シャツの隙間から、チラチラと薄い紅色の突起が
見え隠れする。門脇はそこを舐めた。歯で軽く突起を噛み、吸い上げる。
 「あ・・・ん・・・かど・・・き・・・」
ヒカルが金魚のように、口をパクパクと開けた。ハアハアという吐息が聞こえる。
 門脇は、しばらく口と手で乳首をなぶっていたが、やがて、ヒカルの下半身の方へ
手を這わせていった。
「あぁん・・・」
門脇の手の動きにヒカルが反応する。門脇はにんまりと笑った。ますます、
手を早める。ヒカルの呼吸が速くなった。
「ああ────────────!」
堪えきれず、ヒカルは門脇の掌に放ってしまった。
 門脇は、ヒカルの右足を自分の肩に掛けさせた。ヒカルのもので濡れた指を
喘いでいるヒカルの後ろにあてがった。そして、開いている方の手をヒカルの
腰の下に回し、体を心持ち、浮かせた。指を少しずつ侵入させた。
「あ!あ・・・あん・・・や・・・やだ・・・」
ヒカルが体を捩る。門脇はかまわず、指を一本ずつ増やしながら、前後にさすった。その刺激にヒカルが再び、立ち上がり始めた。
 門脇は指を引き抜くと、自分のものでヒカルを貫いた。
「────────────!」
ヒカルが声にならない悲鳴を上げた。



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