平安幻想異聞録-異聞- 160


(160)
「伊角派」の中には、門脇、和谷といった有力貴族の子弟、また勉学に
秀でた者も多く、内裏の覇権を狙う大貴族達にとっては、ぜひともよしみを
結んでおきたい、注目の新興勢力であった。
ましてや、このところ藤原行洋一派に圧され気味の座間としては、伊角派の
力は喉から手が出るほど欲しいものに違いない。
だから、賀茂アキラはこの「使い」に伊角を選んだのだ。
他の貴族ならいざ知らず、座間は絶対に伊角の申し出を断らない。
それどころか、ヒカルの身柄を差し出すくらいのことで、この若い公達と縁が
出来る(しかも運よくすれば弱みを握ることにもなる)のならば、二つ返事で
了承したに違いない。
ただ、その伊角に使いを頼んだであろう賀茂も、さすがに自分がここで、
そうして引きあわされた有力貴族相手にどんな接待をさせられているかなど、
想像外ではあるだろうけど。
そして、もうひとつ言うなら、伊角がここまで健全な思考の持ち主であることは、
座間には予想外だったのだ。
ヒカルは少しおかしくなった。座間にも思い通りにならないことはある。
「伊角さん、座間…様になんて言って、俺に会わせてもらったんだよ。その時
 本当に、あいつに何も、交換条件のひとつも出されなかった?」
「実を言うとな、明日の評決の際に、座間殿の提案を支持する意見を出して
 欲しいと言われた。今後ともよろしくみたいな事もな」
「やっぱり…。で、伊角さんはどう答えたの?」
「今夜の首尾しだいです…と」
どうとでも取れる上手い答え方だった。
「で、どうするんだよ」
「どうもしないさ、明日の議事では俺が思った通りのこと、国のためにいいと
 思う意見を奏上するだけさ」
「座間の奴、悔しがるだろうなぁ」
「これでも俺は、内裏の貴族らしく、ずるく立ち回ることを覚えたんだよ」
伊角は人の悪い笑顔を作って見せた。ただ、それは本当に「作って見せた」と
いった感じで、ぜんぜん堂にいってなかったけれど。



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル